「ニガテな人に苦しめられている…」
「いろんなものを否定しがち…じつはそんな自分に疲れている」
そんなあなたの悩みにこたえるユング心理学「シャドウ(シャドー)」について、今日からすぐに使えるよう、わかりやすく学べます。
この記事はつぎの書籍を参照し、大学院でホリスティック教育、哲学を専攻してきた執筆者によって書かれています。 ・『INTEGRAL LIFE PRACTICE 私たちの可能性を最大限に引き出す自己成長のメタ・モデル』(ケン・ウィルバー他著/日本能率協会マネジメントセンター出版) ・『心のしくみを探る ユング心理学入門Ⅱ』(林道義著/PHP新書)
突然ですが、みなさんにも「どうしてもこの人は嫌い!ニガテ!」という人が1人や2人、いますよね?
筆者自身も、以前はまわりに敵をつくりがちで、いろんな人とぶつかっては苦しい思いをしてきました。
しかしユング心理学のシャドーの考え方を知ったことをきっかけに、びっくりするほど苦手な人が減ったし、思い悩まなくなりました。
あなたのまわりから“敵”が減り、もっともっとリラックスして生きていけるように…
そんな願いを込めて「シャドー」について書かれたいくつかの専門書&筆者のこれまでの経験から、エッセンスだけを凝縮してお伝えします。
シャドウ(シャドー)とはなにか
「シャドー」と名づけたのは心理学の三代巨匠の1人ユング2です。彼は「無意識のなかにある否定されるもの」を「影」と名づけました3。
ここでのポイントは「シャドー」とは心のなかに抑圧された無意識の話であるということ。つまり、私たちはふだん自分のシャドーを意識していません。
しかし、これはシャドーが私たちにまったく影響を及ぼさないということではないのです。
シャドーは歪んだ不健全な形で、いろいろな場面であなたに影響をあたえています。
次ではシャドーがあなたにどのように影響を与えるか、具体例とともにみていきましょう。
シャドーの投影(シャドーはどのようにあなたに影響を与えるか)
シャドーとは心の“フック”
まずシャドーとは、自分の心のなかの“フック”のようなものだと考えてみてください。
ある人にとっては全然気にならない出来事や人が、自分にとってはすごくショックだったり、イライラしたり、苦手に思えたり…心に引っかかることってありますよね?
平らでなめらかな壁を想像するとわかるように、“フック”のないところには、何も引っかかりません。
つまり、心に何かが引っかかるということは、あなたのなかに“フック”があるということ。
その“フック”こそが、あなたのシャドーなのです。
シャドーは他者へ投影される
あなたの心に引っかかったものは、あなたのシャドーを「投影」していると考えます。
たとえば
みたいなことをやたら思っている人っていますよね?
こういう人は「お金」に対して、なにかしらシャドーがあると考えるのが自然でしょう。
つまり「お金持ちになりたい」「お金が大好きだ」みたいな気持ちを「そんなことを思ってはいけない!」と抑圧してきた結果、それをお金持ちの人に「投影」しているわけです。
ここでのポイントは「私が批判するのは、相手が悪いからだ」と無意識のうちに思っていること。(ベクトルは他者に向いている)
逆にいうと、自分のなかに理由があるとは微塵も思っていません。これが「影」と呼ばれる所以なのです。
「嫌いは好きの裏返し」という言葉がありますが、シャドーはそれと似たところがあります。
つまり「嫌い」なものって、自分が本当はとても望んでいるんだけれど諦めてきたもの、“本当は生きたかったもう1人の自分”かもしれないのです4。
さて、シャドーはときに人を行動へと駆り立てる原動力にもなり、必ずしも悪いことばかりではありません。
しかし、シャドーを無意識のなかで暴走させたままだと、たびたび周囲と軋轢を生みだすこととなります。あなたはムダにエネルギーを消費し、ずっと苦しみ続けることになるでしょう…。
では、シャドーとどのように向き合っていけばよいのか?次からみていきましょう。
投影の引き戻しと個性化
ここの内容は『心のしくみを探る ユング心理学入門Ⅱ』(林道義著/PHP新書)p33〜34を参照しています。
投影の引き戻し
いじめや攻撃は、ほとんどの場合、シャドーを投影して攻撃しています。
これに対処するには、投影している人に対して、それが投影だとわからせねばなりません。
このことをユング心理学では「投影の引き戻し」といいます。
相手を攻撃していたことは、じつは自分を攻撃していたとわかると、相手を攻撃してばかりいられなくなるのです。
いやいや…自分のなかに相手と同じイヤな部分あるわけない!
と感じるかもしれませんが、「相手にイヤだと感じることは、自分のなかにもあるんだ」と一度素直に受け入れ、認めてみてください。
たったそれだけで、驚くほどに楽に生きられるようになりますよ。
シャドーの統合と個性化
それって、自分の嫌いなものをすべて肯定していかないといけないということ?そんなのムリだよ…
結論からいうと、自分のなかにある「悪」や「敵」を丸ごと愛したり肯定したりすることはできないし、する必要もありません。
これは筆者自身の経験もふくみますが、「こういうイヤな部分が自分のなかにもある」と一度認めてしまえさえすれば、それがそのあと脅威ではなくなる(冷静に対応できるようになる)という感覚です。
つまり、最終的に「嫌いなものはやっぱり嫌い」でOKなのです。
『心のしくみを探る ユング心理学入門Ⅱ』では「「悪」にも使い道はあるので、それなりの居場所を見つけてやったほうがいい」と書かれています。
「悪」=「影」の居場所を見つけてやることを「統合」といい、そのプロセスをユングは「個性化」と呼びました。
自我というのは案外個性的ではなくて、集合的で平均的なもの。それをもっと個性的にしようというのが「個性化」です。
個性化するときには、投影しているシャドーや、そのほかいろいろなことを見定めた上で反省したり、いいことは取り込んだりします。
このプロセスを、ユングは「個性化」あるいは「自己実現」と呼び、本来の自分を実現することを目指すのです。
シャドーについてもっと学びたい人にオススメの本
ここまで読んでくださったみなさんは「シャドー」のエッセンスはすべて学んだと思っていただいてOK。
けど、もっとくわしく学びたいという人にオススメの本を厳選して紹介します。
まずオススメしたいのが『INTEGRAL LIFE PRACTICE 私たちの可能性を最大限に引き出す自己成長のメタ・モデル』(ケン・ウィルバー他著/日本能率協会マネジメントセンター出版)です。
この本は人間の全体性を「マインド」「ボディ」「スピリット」「シャドー」の4つの部分にわけ、理論だけでなく、それらについての実践的で効果的なワークが多数紹介されています。
「シャドーの統合って具体的にどうやるの?」という疑問に答えてくれる1冊です。
インテグラル・ライフ・プラクティスについてくわしくは、以下の記事をお読みください。
『心のしくみを探る ユング心理学入門Ⅱ』(林道義著/PHP新書)にも、シャドーについてわかりやすく説かれています。
これは筆者がインテグラル理論研究会5に通っていたときの課題図書。河合隼雄のユング以外のユング心理学も学びなさいとオススメされた入門書です。
また、この本はシリーズになっていますので、ユング心理学を体系的に学びたい人はぜひシリーズで読んでみられてください。
まとめ
心のなかに抑圧された無意識「シャドウ(シャドー)」について学んできました。
記事を最後まで読んでくださったみなさんは、「シャドー」のポイントすべて学んでいます。
あとはぜひ学んだことを実践されて、その効果を味わってみましょう。
イチオシは『INTEGRAL LIFE PRACTICE 私たちの可能性を最大限に引き出す自己成長のメタ・モデル』にのっているワーク「3-2-1シャドー・プロセス」です。くわしくは次の記事をお読みください。
また、シャドーっていろんなパターンがあるのですが、シンプルな場合だと
「私も(あの人みたいに)お金持ちになりたい」
「私も(あの人みたいに)モテたい」
こんな感じで、認めたくない気持ちを素直に認めてみるだけで、楽になることも多いです。
お金は汚いものだ
お金持ちは裏で悪いことをしている
資本主義は格差をどんどん大きくするから悪だ
お金持ちが転落するのを見るのが爽快だ