【書評】『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』要約・まとめ・感想

哲学

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  • 哲学初心者
  • 哲学者の考えを、幅広く知りたい
  • 哲学が現実の社会や、自分たちの生き方にどのように役立つか知りたい

そんなあなたにおすすめ『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』を紹介します。

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています
著者 :小林昌平
発行年:2018
出版社:文響社


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『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』要約・まとめ・感想

『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』は26人の哲学者が、私たちの日々抱える悩みに答えてくれる構成になっています。この記事では、面白かった哲学者たちの「答え」を3つ選んでまとめました。

悩み① お金持ちになりたい|ウェーバー

お金持ちになりたいんだけどどうすればよいの?

この問いに対し、

ウェーバー
ウェーバー

お金という富への執着を捨て、天職のためにストイックに働いた人が結果としてお金持ちになる。

というのが、社会学者の祖マックス・ウェーバー(1864-1920)の答え。

彼は、キリスト教のプロテスタンティズムの人々の方が、カトリックの信徒よりも裕福であるというデータに注目。

また特に、プロテスタンティズムの一派であるカルヴィニズムの「予定説」から、資本主義とプロテスタンティズムとの関連を導き出します。

予定説とは?

神様に救済される人間は、神様が独断で、一方的に、最初から決めているというプロテスタントの一派カルヴィニズムの考え方

「予定説」の立場では、誰が神に救われるのかがわからないという、不安と緊張が生まれます。

このときカルヴィニズムの人々は

「誰が救われるかわからないんだから適当でいいじゃん」

となるのではなく、

「“私は救われる人間である”という確信を自ら生み出すためにベストを尽くそう」

とむしろ考え、神に定められた「天職」へといそしむようになったと考えるのです。

カルヴィニズムは利益を求めることを禁じたキリスト教本来のすがたに立ち返ろうとしました。

しかし、「天職」へと駆り立てるモチベーション・エンジンの発明によって、資本主義を生む原動力となったという逆説があるとウェーバーは考えました。

私たち人間を突き動かすエンジンがあるとしたら、それはお金そのものではないというのがウェーバーの発見なのです。

マックス・ウェーバー推薦図書

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
※『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』の中で、著者(小林昌平氏)が推薦している本

悩み② 自分の顔が醜い|サルトル

外見のコンプレックスがあるんだけれどもどうすればいいの?

この問いに対し、

サルトル
サルトル

外見のコンプレックスがあっても、人間にはそれを乗り越え、何をするか、何になるかという自由がある。

というのが、ジャン=ポール・サルトル(1905-1980)の答え。

人間には他の動物とは根本的に違いがあると言います。

それは、人間には何をするか、何になるかという徹底的な自由があるということ。

これをサルトルは「人間は自由の刑に処せられている」と表現します。

もちろん私たちは、生まれた家庭や国、身体や顔など最初から決まってる部分があるのは事実です。

しかし、人間とは「自分は○○である」という思いこみにとらわれずに、あらゆる自己イメージの束縛から自分を解き放って、自分の可能性を開いていける存在でもあるのです。

きらら
きらら

これは、きららみたいなワンコをはじめ、人間以外の動物にはできないことなんだね


「実存は本質に先立つ」という実存主義の基本的な考え方はこのことを意味しています。

つまり、人間は自分が現にどういう状態でも、「私は○○になれる」と考えたっていいのです。

高卒だから大学教授になれないことはない。

ニートだから芥川賞作家になれないこともない。

同様に、“ブサイク”だから美男美女と結婚できないということはないのです。

ゆるい
ゆるい

興味深いのが、サルトル自身が容姿に大きなコンプレックスを抱えており、コンプレックスを原動力に、知性を鍛えていったということです。
サルトル自身“ブサイク”な容姿をもつ自分を否定して、一流の知識人となることで、チビで斜視だったとしても、セクシーさを獲得していったのです。
その結果、実際にサルトルは、晩年までとってもモテモテだったそうですよ。

イケメンや美女から遠く離れていても、人間は正しい意志と努力によって、その反対側へとジャンプすることができる。

サルトルは自身の生き方を通して、そのことを教えてくれています。

ジャン=ポール・サルトル推薦図書

存在と無〈1〉現象学的存在論の試み
※『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』の中で、著者(小林昌平氏)が推薦している本

悩み③ 他人から認められたい。チヤホヤされたい|ラカン

他人からもっともっと認められたい…

この悩みに対し、

ラカン
ラカン

身近な友人や、SNSで出会う現実に存在しない「小文字の他者」ではなく、より大いなる存在「大いなる他者」に承認されない限りは、人は決して満足することはできないだろう。

というのがフランスの精神分析家、ジャック・ラカン(1901-1981)の答え。

ラカンは人間の承認欲求は幻想に支えられたものであり、どれだけ頑張っても十分に満たされることはないと論じた哲学者。

彼は、他者という現実の個人はいわば「小文字の他者」で、それとは別に、無意識の領域に「大文字の他者」が存在すると考えたのです。

小文字の他者・大文字の他者とは?

小文字の他者:現実に存在する個人 ex)友達、SNSで「いいね」をくれるアカウント

大文字の他者:象徴的な大いなる他者、神様、大いなる権威

そして、私たちは「小文字の他者(現実の個人)」ではなく、「大文字の他者」に認められないことには、人は真に承認欲求を満たすことができないというのです。

たとえば本の中でも紹介されているスピノザ(1632-1677)は、現代の聖書といわれるエチカを生前に発表することなく書き残しました。

そんな彼は「お金や性欲や見栄が気にならないぐらい、本当に楽しいと思う作業をみつけた」と言ったそうです。

「大文字の他者」からの呼びかけに応じるかのように、「小文字の他者」の評価など気にすることなく、「天職」に人生をかける人々がいます。

大いなる仕事に試行錯誤しながら熱中し、みごとやりとげたとき、「小文字の他者」である現実の他者の承認は、あとから勝手についてくるのです。

ゆるい
ゆるい

この答えを読んでいて思い出したのが、
・『ある巡礼者の物語
・『沈黙
などの物語です。
ここに出てくる登場人物は、「小文字の他者」の評価などを気にすることなく、「神=大文字の他者」に向けて、自分の人生を捧げます。
もちろんこうした「神」にまつわる物語だけではなく、すべての人が“より大いなるもの”に呼びかけられるように、無我夢中で天職を全うする。
そのような生き方ができたとき、人は「小文字の他者」の評価など気にはならなくなるのでしょう。

ジャック・ラカン推薦図書

斜めから見る
※ラカン本人の著作は難解なため、ジジェクという哲学者による解説書
※『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』の中で、著者(小林昌平氏)が推薦している本

まとめ

上で紹介した3つの答え以外にも、スピノザが答える「嫌いな上司がいる。上司とうまくいっていない」という悩みや、ウィトゲンシュタインが答える「重い病気にかかっている」など、勉強になる部分が多かったです。

なお、よりビジネス寄りの哲学の入門書武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』も目を通しました。

しかし、個人的には『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』の方が、哲学者の言葉の引用がきちんとあったり、推薦図書の紹介などもあり面白かったです。

ただ、こうした本にありがちなのですが、哲学者の言葉を「誤用」しているというクチコミも見られ、確かにこれだけでその思想家をわかった気になってはいけないと感じはしました。

ただ、それでもなお、生活とはかけ離れがちな「哲学」を身近なものにしつつ、次への学びへとつなげる入門的なブックガイドとして、とてもよい本なのではないでしょうか。


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