「池井戸作品がたくさんあるけど、本当に面白い作品はどれ?」
そんなあなたのために、おすすめ作品を厳選&全作品を年代順にまとめ、口コミを集めました。(筆者読了済みの作品は本音で感想も書いています)
この記事を読めば、池井戸潤小説の本当に読むべき作品がわかります。
『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』など池井戸潤の代表作はすべて、Amazonの“聴く読書”Audible(オーディブル)で聴き放題で聴けます。
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【厳選】池井戸潤おすすめ小説7選
まずは池井戸作品全35作中22作品を読んできた中から特に面白かった作品、本当に読むべき作品を厳選しました。どの作品も人間描写が巧みな、心熱くなる傑作ばかりです。
半沢直樹2 オレたち花のバブル組
銀行本店営業部に異動した半沢直樹が押しつけられたのは、巨大損失を出した老舗ホテルの再建という頭取命令だった。銀行内の見えざる敵、金融庁検査官・黒崎との対決、出向先での執拗ないびり。やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。その流儀を貫く半沢は、次々に襲いかかる逆境をどう切り抜けるのか――? 大ヒットドラマ「半沢直樹」原作!!
小説『半沢直樹』シリーズはドラマのインパクトが強すぎて、ややドラマ負けしている印象を受けます。(それでも十分に読むべき名作ばかりですが…)
しかし、そのなかでドラマに負けていないのがシリーズ2作目『俺たち花のバブル組』です。
半沢と同期の近藤、黒崎検査官や大和田乗務など、ドラマの人気キャラクターも大活躍!
半沢直樹 アルルカンと道化師
東京中央銀行大阪西支店の融資課長、半沢直樹のもとにある案件が持ち込まれる。
大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。
有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とはーー!? 半沢直樹シリーズ待望の最新作!!
半沢直樹シリーズ最新作『アルルカンと道化師』もすばらしい作品。
物語のキーパーソンとなる画家たちの友情に胸が熱くなります。
ミステリー要素も強めで、前作までのような経済・金融小説とはまた一味違う、新鮮な楽しみ方ができることでしょう。
下町ロケット ゴースト・ヤタガラス
帝国重工の業績悪化や番頭・殿村の父の大病など、佃製作所は予期せぬトラブルによりまたしても窮地に陥っていく。そんな中、社長・佃航平が下した意外な決断とは……? 宇宙(そら)から大地へ。いま、新たな戦いの幕が上がる――!
池井戸潤の代表シリーズ。阿部寛さん主演でドラマ化もされています。
有名なのは直木賞を受賞した1作目なのですが、個人的おすすめはこの3・4作目の『ゴースト』と『ヤタガラス』です。
目先の損得よりも「日本の農業を救う」という理念に向かって突き進む、佃製作所の仲間たちに感動必須。
この2作はシリーズですので、ゴースト→ヤタガラスの順でお読みください。
空飛ぶタイヤ
走行中のトレーラーのタイヤが外れ歩行者の母子を直撃した。車両の製造元であるホープ自動車が出した結論は、「運送会社の整備不良」。納得できない運送会社社長・赤松徳郎は、真相を追及しようとする。赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況に陥るが……!?
三菱自動車リコール隠しという現実の事件が題材となっている社会派小説。
仲村トオルさん主演でドラマ化、長瀬智也さん主演で映画化もされています。
池井戸作品のなかではトップクラスの長編ですが、その分人間描写がとても緻密。
ぜひ読んでいただきたい、傑作小説です。
鉄の骨
中堅ゼネコンの若手、富島平太が異動した先は、“談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。
恋人の萌との関係もぎくしゃくし、悩みはつきない平太。技術力を武器に、真正面から地下鉄工事の入札に挑もうとする平太らの前に、「談合」の壁が立ちはだかる。
組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!
描かれているのは、私たちの多くが知らないであろう「談合」の世界。神木隆之介さん主演でドラマ化もされています。
組織のなかでさまざまな矛盾や葛藤を感じている人に、特におすすめしたい作品です。
七つの会議
きっかけはパワハラだった。万年係長がエリート課長を社内委員会に訴える。しかし役員会が下したのは、不可解な人事。二人に何かあったのか。この会社には何が起きているのか――。
夢は捨てろ。会社のために、魂を売れ。”働くこと”の意味に迫る、傑作クライム・ノベル!
野村萬斎さん、香川照之さん、及川光博さんなど豪華メンバーが出演した映画でも有名な作品。
最初はバラバラに見えていた物語が、会社の秘密へとつながっていく展開がとってもスリリング。
会社の不正・腐敗をあつかうのは池井戸潤さんの十八番ですが、この作品の舞台となる東京建電とゼノックスはまぁとにかく腐敗しまくっており、そこらへんも見どころです。
陸王
勝利を、信じろ。
埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、足袋作り百年の老舗。日々資金繰りに頭を悩ませる宮沢社長は、足袋製造の技術を生かしたランニングシューズの開発を思いつく。
伝統と情熱、そして仲間との強い結びつきで、こはぜ屋は一世一代の大勝負に打って出る! ドラマ化(TBS日曜劇場 主演:役所広司)でも話題を呼んだ、感動の物語。
役所浩二さん主演でドラマ化もされた人気作。
衰退する足袋業界での生き残りをかけた挑戦と、マラソンで再起を賭けた男の物語が見事にマッチ。
ドラマを見たことがあるという人も、きっと楽しんでいただけます。
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【出版順】池井戸潤全作品レビュー&口コミ
半沢直樹シリーズ
半沢直樹1 オレたちバブル入行組(2004)
バブル期に大手銀行に入行し、大阪西支店で融資課長となった半沢直樹。支店長命令で無理に融資の承認を取り付けたものの、会社は倒産、支店長の浅野はすべての責任を半沢に押しつけてきた。四面楚歌の半沢に残された道は債権回収しかない。半沢が取った一発逆転の方法は――!?
基本は性善説。やられたら、倍返し。大ヒットドラマ「半沢直樹」原作!!
ドラマ『半沢直樹』記念すべき第1作目の原作。
私はドラマの大ファンですので「ここから始まったのか〜」と思うと感慨深いものがありました。
ただ、小説ももちろん面白いのですが、正直いうとドラマの方が自分は好きでした。(『半沢直樹』シリーズはドラマの完成度が高すぎますね)
浅野支店長に対する半沢の追い込みっぷりは、原作の方が段違いにえげつないのが見どころでしょうか。
○よい感想
勧善懲悪のストーリーが痛快。だが、テレビドラマを超えられていない。
通常、原作となる小説と映像化したテレビドラマを比較した場合、様々な点でドラマを物足りなく感じるものであるが、本作については、ドラマの演出や脚本があまりにも素晴らしかったため、小説よりもドラマに軍配を上げたい。
とはいえ、この小説も抜群に面白く、読み始めたら一気に引き込まれるストーリー展開は秀逸である。
見どころは、絶体絶命の危機に瀕する半沢直樹が、粉飾決算を行った西大阪スチールの東田と共犯の浅野支店長を粘り強く追い詰めて、完膚なきまでに叩きのめすまでの過程である。
とりわけ、卑劣に半沢の追い落としを図った浅野の尻尾を掴んで、匿名メールを通じて精神的に追い詰めていくシーンは圧巻である。〔…〕
夢と希望を抱いて銀行員となったバブル入行組も、その多くは、夢破れ、理想を失い、厳しい現実に直面する。
そんな中で、最後に半沢が語る言葉が印象的だ。「夢を見続けるってのは、実は途轍もなく難しいことなんだよ。その難しさを知っている者だけが、夢を見続けることができる。」
娯楽性が高く万人受けするストーリーのため、誰でも楽しめる小説である。
●悪い感想
ご都合主義な展開?
手に汗を握るストーリー。あっという間に読了できました。
けれども、あり得ないようなミラクルが何度も起きる展開には少し疲れを感じました。
半沢直樹2 オレたち花のバブル組(2008)
銀行本店営業部に異動した半沢直樹が押しつけられたのは、巨大損失を出した老舗ホテルの再建という頭取命令だった。銀行内の見えざる敵、金融庁検査官・黒崎との対決、出向先での執拗ないびり。やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。その流儀を貫く半沢は、次々に襲いかかる逆境をどう切り抜けるのか――? 大ヒットドラマ「半沢直樹」原作!!
ドラマ『半沢直樹』シーズン1の伊勢島ホテル編の原作ですが、これが予想以上の名作で驚きました。
なんといっても、半沢の同期の近藤がもうひとりの主役。名言連発です。
「人生は変えられる。だがそれには勇気がいる。いまのあんたはいじけたサラリーマン根性丸出しの、見苦しいオヤジだ。ノーに比べたら、イエスは何倍も簡単なんだ。だけどな、オレたちサラリーマンがイエスとしかいえなくなっちまったとき、仕事は無味乾燥なものになっちまうんだよ」
『半沢直樹2 オレたち花のバブル組』より
大和田常務、黒崎検査官などお馴染みのキャラもこの回で登場。
○よい感想
近藤さんに拍手喝采。
半沢と同期だが、あまりの仕事のプレッシャーで自律神経失調症(だったっけか?)で休職し、
出世ルートから脱落した近藤さんの、見事な復活!
そこはストーリーの本筋とはちょっと外れた物語ですが、
身近に同じ症状で苦しんでいる先輩や同期がいるので、
近藤さんの苦悩がよく分かったし、
昔の自分らしさを取り戻していくシーンでは泣いてしまいました。
悪い奴をこてんぱんにしてくれる痛快さに追加して、
こんな風に人物描写でも惹きつけてくれます。
今回の最強の敵、黒崎氏は、なんとオネエ言葉でしゃべります。
でもオカマじゃないんです。
何だか読者全員に徹底的に嫌われる役だから、
という理由でそういう設定になったのかなあと違和感をずっと感じました。
その「?」を補って余りあるストーリーの面白さ、分かり易さ、ゆえに★は5です。
●悪い感想
やはりドラマの方が印象的でした
前作品を読んだときにも思ったのですが、やはりドラマの方がドラマチックな演出が満載で、小説よりも印象に残るシーンが多かったように思います。残念ながらドラマの時のような高揚感はありませんでした。しかし、ドラマでは見所になっていた「土下座」の演出は一体誰の案だったのでしょうか?書籍の中では・・・ありませんでしたね。
半沢直樹3 ロスジェネの逆襲(2012)
人事が怖くてサラリーマンが務まるか!
まさかの出向で銀行から証券子会社に飛ばされた半沢直樹に、IT企業買収の案件が転がり込む。巨額の収益が見込まれたものの、親会社の銀行が卑劣な手段で横取りしようとする。
倍返しをもくろむ半沢は、バブル世代に反発するロスジェネ世代の部下・森山とともに、周囲をあっと言わせる秘策に出るが――!?
2020年コロナ禍で落ち込む日本社会を元気付けてくれたドラマ『半沢直樹』第2シーズン。
その第一部の原作となっているのが『ロスジェネの逆襲』ですが、文句なしの名作です。
全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係がない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中味だ。
出典『ロスジェネの逆襲』池井戸潤 著
東京中央銀行から子会社へ出向しても、決して腐ることなく、真摯に仕事に取り組む半沢。
その姿は、ロスジェネ世代1だけでなく、抗うことのできない時代の流れや、納得のいかない人事などによって、さまざまな理不尽を経験しがちな私たちを強く勇気づけてくれます。
○よい感想
証券子会社に出向しても、半沢直樹の倍返しが見られます
ドラマの第2シリーズが始まりましたが、その原作となる第3巻です
今回は、IT企業の買収をめぐる親会社の銀行と、子会社の証券の争いです
前作で、役員の悪事を暴いたせいで、一旦、東京中央銀行の子会社であるセントラル証券に出向となった半沢直樹
仕事は、親会社から回される物が多いのですが、突然、IT会社からの企業買収のアドバイザーの仕事が舞い込みます
ところが、すんでのところで、親会社に仕事を奪われるのですが、何か、からくりがあるのではないか
今回も、銀行人事などものともせず、役員にも歯向かう、痛快な半沢直樹の活躍が楽しめます
○悪い感想
池井戸ファンとしては、期待ハズレでした。「下町ロケット」や「空飛ぶタイヤ」の方が読み応えがあります。
半沢直樹4 銀翼のイカロス(2014)
今度の相手は巨大権力!
出向先から銀行に復帰した半沢直樹に降ってきたのは、破綻寸前の帝国航空再建という頭取命令だった。野心に満ちた女性閣僚が立ち上げた再生タスクフォースは、500億円もの巨額債権放棄を突き付けてくるが――。
政治家との対立、立ちはだかるあの宿敵、行内の派閥争い。プライドを賭け闘う半沢に勝ち目はあるのか――!?
こちらもドラマ『半沢直樹』第2シーズン、帝国航空編の原作となっている作品。
筆者自身はドラマ視聴前にすでに読了済だったのですが、もちろん十分に楽しめるものの、正直面白さはやや他の作品に劣るかなぁ…と思っていました。
ただこの作品は、ドラマ版と原作とでかなり違うのが特徴。(例えば、大和田常務は原作に出てこないし、白井大臣の扱いもちがう)
そしてドラマ版は、原作を知っている人だからこそ、ドキドキハラハラする場面が実は用意されていたりします。
ドラマ『半沢直樹』の帝国航空編が好きだった人は特に、その違いを楽しんでいただきたいです。
この原作を読んだ後に、またドラマ版に戻ったりすると、2倍3倍楽しめること間違いありません。
○よい感想
問題ある組織の中にも必ず存在する良心的な人たちの活躍!
面白かったです。
主人公もたくましくなって序盤・中盤のトラップは難無くこなしています。
その分、溜めに溜めてのラストの一発逆転という爽快感は減っているかも
しれませんが、辻褄があってると感じました。
そして、厳しい競争社会の中にも、腐った組織の中にも、必ず存在する
良心的な人々、真の職業人たち、そんな人たちが主人公を助け、協力し合い
正しいと信じる道を切り開いていくお話です。
それってファンタジーと思う人もいるかもしれませんが、私は案外、日本の
縮図だと感じていますし、そう信じています。
折しも政党再編にぎやかな衆院選の最中に読みましたが、民主党政権誕生時の
ことなども思い出し感慨深いものがありました。
○悪い感想
主人公が知恵で乗り切るシーンが少ない
谷川の奮闘シーンがあまりなく、物語途中の逆転シーンに説得力がなかった。
また、行内の秘密の切れ者みたいな人がいきなり出てくるのはいただけなかった。
もう少し、主人公の知恵で勝利を勝ち取ってほしかったので、小説としては掘り下げが不十分だと思います。
政治に関わる内容になってしまっているので、主人公の他力本願が今回目立つので、案件がでかすぎるのが原因かと。小説としての深みが足りないと感じました。
登場人物たちのセリフも淡々としていて、なんだろう、こう感情的な表現が少ないように見えました。
3巻のロスジェネもそうだけど、TVは感情表現など、だいぶオリジナル入ってますね。
それも含めて、今回も、半沢の家族、プライベートシーンは皆無でした。
なので、半沢の信念は理解できますが、半沢に共感できる部分がなく、最後もあっさり終わる。
面白いのは面白いです。でも余韻が少なく、内容をすぐに忘れてしまいそうです。自分には内容が薄かった。
半沢直樹 アルルカンと道化師(2020)
東京中央銀行大阪西支店の融資課長、半沢直樹のもとにある案件が持ち込まれる。
大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。
有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とはーー!? 半沢直樹シリーズ待望の最新作!!
半沢直樹シリーズの最新作『半沢直樹 アルルカンと道化師』は、時系列でいうと『半沢直樹1 オレたちバブル入行組』のさらに前にまで戻ります。
半沢直樹がまだ東京中央銀行大阪西支店の融資課長だったときの物語なので、国家権力と立ち向かった前作を思うとスケールはそこまで大きくありません。
しかしスケールダウンしたことで、単なる陰謀や策略的な話にとどまらず、登場人物の人間模様がゆたかに描写されるのがその魅力。
とくに、物語のキーパーソンとなる画家たちの友情に、グッと込み上げてくるものがありました。
○よい感想
時系列的には1作目の前の話です。
前作『銀翼のイカロス』が出てからはや7年ですか、ずいぶん長いこと待った気がします。
もはや過去の実績から、行内では押しも押されぬポジションになったであろう半沢を、
どのように作中では扱うのか、心配半分楽しみ半分でしたが、
どうやら時系列的には『俺たちバブル入行組』で入行後から本編開始の間に起った出来事のようです。
そのため、なつかしの浅野支店長や小木曽が出てきますし、中野渡頭取もまだ頭取になる前です。
肝心の本編といいますと、過去作よりさらに人情に寄った話が展開されていきます。
ミステリ要素もあって、ちょっと新鮮でした。
今までと違う点は、あとがきから推測するに、おそらくモデルになった具体的な企業や事件が無いことでしょうか。
そのためフィクション色が強い感がしますが、十分に面白いです。
●悪い感想
期待はずれかなぁ
池井戸作品は全て読んでいる中での感想です。半沢シリーズで推理要素が強いとの触れ込みでしたが謎も謎解きもありません。最初から黒幕がわかる普通の展開です。江戸川乱歩賞の頃の作品を期待してしまったので、少しガッカリでした。それなりに楽しめますが、黒幕への仕返し?も弱い感じで、ストーリー含めて半沢シリーズでは一番の駄作だと思いました。帯に「探偵半沢、絵画の謎に挑む」と書いて無かったらそうは思わなかったかもしれませんけど。
複雑なストーリーでは無い、読みやすい娯楽小説ですね。
下町ロケットシリーズ
下町ロケット(2010)
研究者の道をあきらめ、家業の町工場を継いだ佃航平は、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。創業以来のピンチに、巨大企業・帝国重工が近寄ってきた。特許を売れば、窮地を脱することができる。だがその技術には、佃の夢が詰まっていた――。男たちの矜持が激突する感動のエンターテインメント巨編。第145回直木賞受賞作。
直木賞も受賞した、いわずもがなの池井戸潤代表作。
下町の小さな町工場が、数多くのピンチを乗り越えて、ロケット開発へと参画していく物語。
とっても面白いですが、すでにドラマに観ている人はもしかしたら物足りなさを感じるかもしれません。
ドラマ未視聴の人は大満足間違いありませんので、ぜひ聴いてみてください!
▼あわせて読みたい
○よい感想
特に理系の道を考えている高校生に読んで欲しい
「働く」とはどういうことか、を考えさせられました。
生活が安定して、食うに困らなければ幸せか?
活き活きと働くには、一見儲けにつながらないような夢が必要なのではないか?
同著者の別の作品の中に、
「仕事の質が、そのまま人生の質」というセリフがありましたが、
本当にそうだなとこの本を読みながらも思いました。
佃製作所の面々は、
「何か面白いものを作ってやろう」というやる気に顔を輝かせて、
自分たちの技術に絶対の自信を持って働いている。
かっこいいなあと思います。
宇宙工学の分野を志望している生徒に、
この本を勧めていますが、
理系生徒全員に読んでもらいたい本です
●悪い感想
悪くない
開発技術の部分は話が浅くて、理系や工学オタクにとっては物足りなくてイマイチ本にのめり込めないかなと思う。この本の主人公は経営者であり、尚且つ技術者なので技術の部分の解説が浅いと主人公の人物像も浅くなってしまい、惜しい。一方で、登場人物それぞれの思惑が有る中でビジネスの心理戦を勝ち抜き仲間と共に正攻法で事態を納めるストーリー展開は、スカッとして気分が良い。
↓ドラマ『下町ロケット』もとてもオススメ。Amazonプライム会員なら無料で見れます。(有名なのは阿部寛さん主演の方ですが、そちらは現在プライムでは観れなくなっています2)
下町ロケット ガウディ計画(2015)
バルブシステムの開発で倒産の危機を切り抜けてから数年、佃製作所はまたしてもピンチに陥っていた。そんな時、社長・佃航平の元に、かつての部下から医療機器の開発依頼が持ち込まれる。「ガウディ」と呼ばれるその機器が完成すれば、多くの心臓病患者を救うことができるというのだが――。ロケットから人体へ。佃製作所の新たな挑戦が始まる!
大人気『下町ロケット』シリーズ2作目。今回は、医療機器の製造をめぐるいろんな人間模様が描かれます。
作品として十分楽しめますが、池井戸小説をすでにたくさん読んでいる人にとっては、大きなサプライズはないかもしれません…。
『下町ロケット』1作目が気に入った人には、特にオススメ!
○よい感想
今回も楽しめました
主人が会社を経営しており、私は経理を担当しているせいか、殿村さん目線で読んでいました。
池井戸作品と言えば、スカッとすることが多かったのですが、感情移入したのはこれが初めてのような気がします。
ハラハラドキドキの展開や、感動で涙がでたりで忙しかったのですが、充分楽しめました。
人生はいろんな場所で壁にぶつかり、挫折することもある。失敗もする。不満もたくさん出てくる
それを乗り越えたときの感動は、乗り越えた人でしか味わえない、最高のご褒美ではないでしょうか?
架空上の人物とはいえ、佃社長の下で働く社員たちが羨ましいとさえ思いました。
●悪い感想
おもしろかったけど
佃製作所の新たな挑戦はそれなりにおもしろかったけれど
一作目があまりにも印象深かったので、やや色あせ気味かなという気がした。
下町ロケット ゴースト(2018)
帝国重工の業績悪化や番頭・殿村の父の大病など、佃製作所は予期せぬトラブルによりまたしても窮地に陥っていく。そんな中、社長・佃航平が下した意外な決断とは……? 宇宙(そら)から大地へ。いま、新たな戦いの幕が上がる――!
ドラマも見ていてストーリーは知っていましたが、個人的には1・2作目よりも断然面白かったです。
中盤以降、悪徳弁護士をやっつける展開はスカッとします。
3作目『ゴースト』は4作目『ヤタガラス』の上巻のポジションですので、必ずセットでお楽しみください。
○よい感想
中小企業の応援歌だと思う
現実として、「帝国重工」は「M重工」だと推測されるが、あれほどの大会社でも、最近、米国の原子力関連子会社で数千億円の欠損を出している、と新聞報道がなされており、船舶関連、航空機関連等今一つ芳しくない模様である。池井戸作品は、そのような大会社を相手としても、日本の中小企業の技術力・ノウハウは十分に対抗して生き残れることに期待している。中小企業を元気づけてくれる一冊であると確信した。
●悪い感想
面白いか➡︎面白い、でもね
面白かったかどうかで言うと、面白かったです。
私は速読者ではありませんが、集中して読んでいるときは、比較的読むのが速い人間です。
その代わりに、何度も読みます。
そんな私が、飽きる事なく一気に読んでしまうほど面白かったです。
しかし、4時間ほどで読めてしまう内容なんですよね。
しかも読み終わった後に、もう1回読もうと思わない。
つまり中身が薄いって事だと思います。
下町ロケット ヤタガラス(2018)
ドラマ化(TBS日曜劇場)で大人気のシリーズ第4弾!
ついにトランスミッションの開発に乗り出した佃製作所。ライバル企業と火花を散らす中、佃社長は帝国重工・財前の仲介により、旧友・野木教授と思わぬ再会を果たす。準天頂衛星「ヤタガラス」が導く壮大な物語は、どのような結末を迎えるのか――!?
3作目『下町ロケット ゴースト』のつづき。
「日本の農業を救う」という理念のため、目先の損得勘定を超えた決断をする佃製作所の仲間たち。
あまりに理想的すぎる展開だと感じる人もいるかもしれませんが、自分はとても感動しました。
○よい感想
農業のデジタル化によって日本の農業を救うことができるのかを問う
いま日本の農業は一気に高齢化が進み、深刻な労働力不足に喘いでいる。就農人口の7割が65歳以上の高齢者。新たな農業の担い手がいなければ日本の農業は廃れ、日本における食料自給率が下がる一方になるとの危機感の中本書は、一筋の希望を見出す物語だと言えます。
『ゴースト』から完全直結する本書。
農業に対する危機感の解決策の一つとして、無人農業ロボット技術が取り上げられています。
ここにきて、『下町ロケット』第1作で取り上げられたロケット技術と農業が、遂につながることになります。
GPSを利用した自動車の自動運転技術は、2022年の今、世界中の各社が先を争うように開発が進んでいるかと思われますが、2018年に単行本として刊行された本書は、そのような現状を先取った内容とも読め、さらに、技術を日本の農業の未来と関連付けた点において、その理念に共感させられます。
本書あとがきにあるように、本書で取り上げられている技術は現実に研究が進んでおり、農業のあり方ががらりと変わる可能性を持っています。
社会のあらゆる分野でデジタル化が叫ばれていますが、本書からは、農業のデジタル化によって、農業の担い手を増やし、食料自給率の向上に繋がる可能性を秘めていることが伝わってきます。
池井戸潤のこれまでの作品同様、嫌な奴をぎゃふんと言わすカタルシスはしっかり準備して上で、それだけでは前に進めないよ、と更にその上を行く展開を見せる本作。
一気読み必至です。
●悪い感想
佃の影薄
全編通じて佃製作所の影が薄く、これまでのシリーズでは自らの頑張りで道を開いていく話だったのが、
周りの流れに流されるままだったような。。
ライバルを助けるという意思決定をした所が一つ見せ場なのかもしれませんが、
佃の技術的優位性とそれを支える技術者の情熱、みたいなのが今回は見えなかったかな。
天才島津がいたから技術的課題は丸っと解決できてました、みたいな。
この感じであれば、続編シリーズが新しく出ても買わないかな。
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花咲舞シリーズ
不祥事(2004)
事務処理に問題を抱える支店を訪れて指導し解決に導く、臨店指導。
若くしてその大役に抜擢された花咲舞は、銀行内部の不正を見て見ぬふりなどできないタイプ。
独特の慣習と歪んだ企業倫理に支配されたメガバンクを「浄化」すべく、舞は今日も悪辣な支店長を、自己保身しか考えぬダメ行員を、叱り飛ばす! 張り飛ばす!
痛快! 新しい銀行ミステリーの誕生!
花咲舞が黙ってない(2017)
東京第一銀行の跳ねっ返り行員・花咲舞は、己の信じる正義のもと、空気は読まず、時にブチ切れながら、問題支店や勘違い行員の指導に奮闘している。 そんな中、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまい……このままでは我が行はダメになる! 歯を食いしばり行内の闇に切り込む、痛快連作短篇
『読売新聞』に連載されていた、花咲舞シリーズの短編集。
他の池井戸作品に比べると、まぁ普通の面白さです。
のちに短編カットで発売されている『神保町奇譚』もこの本に含まれています。
また買われるなら、2018年発表の短編『犬にきいてみろ』も収録されている新装増補版がオススメです。
○よい感想
相変わらず「黙ってない」
とても、興味深く、また爽快感をもって読ませていただきました。池井戸さんの一連の作品は、とても興味があるし勉強になります。
また、小説の醍醐味ですが「世の中、舞のような人間はいないだろー」と、読ませていただくのが、また面白いです。
●悪い感想
おもしろさも中くらいなり
初期の池井戸作品はどれをとっても斬新、痛快そのものだった。特に三菱のメシを食った者は数倍楽しめたと思う。
けれど、ここまで作品が多く作られてくると斬新さが薄れてくるのはやむを得まい。池井戸色は十分にあるが、かつての読後満足感には遠く及ばない。
銀行勤務の実態、三菱系企業での独特の感覚は経験者にしかわかるまいが、そのあたりの強烈な面白さが減殺されてくるのは仕方のないところであろう。
下町ロケット、空飛ぶタイヤは一連の銀行話とは違った切り口で小説としてとてもよかったが、半沢モノなど銀行員、特に融資業務に関する一連の作品は、日頃銀行業務に知識のない我々読者に全く新しいジャンルとして美味を与えてくれたと思う。
著者の出身地の隣町に住む者として今後も応援を続けたい。
犬にきいてみろ(2018)
おせっかいな叔母に拝み倒され、人生初のお見合いに出かけた花咲舞。相手は町工場の二代目社長で、育ちはいいが気の弱そうな、平井勇磨という青年だ。銀行勤めということで経営の相談を持ちかけられていた舞は、よりにもよって、銀行で臨店班を組んでいる相馬健に見つかってしまう。大喜びで冷やかす相馬を見て、舞は、勇磨の相談相手にすえることを思いつく。大ベテランの工場長に頭が上がらないという勇磨は、「工場長の不正に気をつけろ」という内部告発の手紙を受け取り、人知れず悩んでいたのだ。
工場長は本当に不正を働いているのか、手紙を出したのは誰か。舞と相馬は、真相を突き止めるため動き出すが――?
ドラマ化で人気を呼んだ花咲舞シリーズ最新作!
花咲舞シリーズのサクッと読める短編。
Kindleの電子書籍、“聴く読書”オーディブルあるいは『新装増補版 花咲舞が黙ってない』に入っています。
オーディブル版の朗読は、ドラマで花咲舞役を演じた杏さん。
○よい感想
頑張る人は報われる
親らから引き継いだ町工場を銀行員の彼女と融資担当の社員が工場の再建を目指すために奮闘するストリーがテンポよく進んであっという間に読み終えてました。読み終えてすっきりした気分になりました。
●悪い感想
サクッと楽しめました
が、読み応えは足りなかった。
でも199円なら良しですね。
花咲舞シリーズも楽しいです。
民王シリーズ
民王(2010)
「お前ら、そんな仕事して恥ずかしいと思わないのか。目をさましやがれ!」 漢字の読めない政治家、酔っぱらい大臣、揚げ足取りのマスコミ、バカ大学生が入り乱れ、巨大な陰謀をめぐる痛快劇の幕が切って落とされた。夢かうつつか、新手のテロか? 総理の父とドラ息子の非常事態。それぞれが見つけた真実のカケラとは!? ドラマ化(遠藤憲一✕菅田将暉W主演)で話題を呼んだ、痛快政治エンタメ。
『民王』は池井戸潤小説ではめずらしい政治がテーマ。
総理大臣とその息子が、とある陰謀により中身が入れ替わってしまう物語。しかし、シリアスさはほぼ皆無で、笑って楽しめる作品です。(けれどもそれなりにメッセージ性もある)
ちなみに、ドラマ化もされているので「見たことがあるよ」という人も多いのではないでしょうか?
けれども『民王』小説版は、ドラマ版と全然ちがいます。
なのでドラマを見たという人も、まったく新しい気持ちで楽しめること間違いないでしょう。
↓ドラマ版『民王』もオススメ。原作とかなり違いますが、ドラマはドラマで名作です。Amazonプライム会員なら無料で見れるので、ぜひあわせてお楽しみください。
民王 シベリアの陰謀(2021)
謎のウイルスをぶっ飛ばせ!!
「マドンナ・ウイルス? なんじゃそりゃ」第二次内閣を発足させたばかりの武藤泰山を絶体絶命のピンチが襲う。目玉として指名したマドンナこと高西麗子・環境大臣が、発症すると凶暴化する謎のウイルスに冒され、急速に感染が拡がっているのだ。緊急事態宣言を発令し、終息を図る泰山に、世論の逆風が吹き荒れる。一方、泰山のバカ息子・翔は、仕事で訪れた大学の研究室で「狼男化」した教授に襲われる。マドンナと教授には共通点が……!? 泰山は、翔と秘書の貝原らとともに、ウイルスの謎に迫る!!
ウイルス蔓延による政治的混乱や、社会の分断など、昨今の世相が反映された作品。
政治家のリーダーシップとか、ポピュリズムへの批判とか深読みするといろんなテーマが詰まっています。
もちろんそれなりには面白いですが、Amazonレビューでも書かれているように、ちょっとストーリーが大味すぎて物足りないかも。
○よい感想
民王の続編
まさか、続編が出るとは。。
しかも、総理が変わるこのタイミング。作者は狙ってたのかな。
しかも、未知のウイルスとの闘いとか。
池井戸潤のなかで、唯一と言ってもいいくらい、お笑い要素が多い作品。
最高でした。
●悪い感想
池井戸史上一番の駄作
池井戸さんが好きで全作持っているので楽しみにしていました。
今回の作品は、正直駄作だと思います。
読んでいてハラハラ感も謎解きも意外性も無く、先さえ読めてしまいました。
日本だけこんなウィルスが流行るのもおかしな話。
池井戸好きにはおすすめしません。
しかし、泰山は良い総理ですね!
その他の小説
果つる底なき(1998)
「これは貸しだからな。」謎の言葉を残して、債権回収担当の銀行員・坂本が死んだ。死因はアレルギー性ショック。彼の妻・曜子は、かつて伊木の恋人だった……。坂本のため、曜子のため、そして何かを失いかけている自分のため、伊木はただ1人、銀行の暗闇に立ち向かう!第44回江戸川乱歩賞受賞作
池井戸潤さんのデビュー作であり、第44回江戸川乱歩賞受賞作。
人がボンボン死ぬサスペンス作品ということもあり、『半沢直樹』『下町ロケット』などと比べるとポップさは少ないですが、十分に楽しめると思います。
○よい感想
池井戸潤のサスペンス
池井戸先生といえば、やはり銀行。下町ロケットや陸王、アキラとアキラ、など多種多様な作品だが、最終的には零細企業が大企業を相手に戦う、そして痛快に大企業を打つ任す。池井戸作品は、大どんでん返しで弱者が挑戦し成功する、サクセスストーリー。
文章の構成などで読者をドンドンと魅了していくと思います。
でも、立て続けて作品を読むと話は非常に面白く、どうなるんだろうと読み進めてしまうけれど、結果的にはサクセスストーリーであるとわかって読んでいる自分がいました。
でも、この作品はサスペンス。しかも江戸川乱歩賞を受賞している。
現在の池井戸潤は当然だが、ヒットメーカーでこの作品は彼のデビュー作。
しかも、サスペンス。私は意外に思って、この本を読みだしました。
中身はやはり銀行が舞台だったので、やっぱりかと思っていましたが、内容は驚くべき本格ミステリー。
今や、飛ぶ鳥を落とす勢いの池井戸先生。文章や構成だって当然、抜群にうまい。
でも、この作品は、デビュー作。でも、驚くのは、まったく鮮やかな文章と構成。
今年、書きましたといわれても全く、驚かないほどの巧みさ。
もし、現在の池井戸作品に少し、慣れを感じてしまっている方がいらっしゃったら、一度、読んでみてください。
同じ銀行でも、ミステリーの銀行、犯人捜し、一気に読破することができます。
ほんとうに、違った意味での大ドン返しが描かれています。
●悪い感想
初期の作品です。
今更ですが、江戸川乱歩賞受賞作品を読み進めているところでこの作品に出会いました。
銀行内部の描写は面白く読ませていただきましたが、主人公の銀行員が殺し屋に襲われる展開には違和感がありました。それに、ハードボイルド作品ばりに元恋人への葛藤が不必要に多いと感じました。
架空通貨(2000)
女子高生・麻紀の父が経営する会社が破綻した――。かつて商社マンだった社会科教師の辛島は、その真相を確かめるべく麻紀とともに動き出した。やがて、2人がたどり着いたのは、「円」以上に力を持った闇のカネによって、人や企業、銀行までもが支配された街だった。 江戸川乱歩賞受賞第1作『M1』を改題
銀行狐(2001)
乱歩賞作家はすごい!
圧倒的なリアリティで描く、5つの銀行ミステリー
銀行はいまも怪しい事件を封印している。
品行方正の仮面の下に渦巻く欲望。堕落したエリートたちが陥った絶望の罠――。
●破綻した銀行の支店金庫室に隠された死体の謎――「金庫室の死体」
●営業時間のまっただ中、支店の窓口で定期的に現金が消える――「現金その場かぎり」
●女子行員が起こした“振込口座取り違え”で明るみに出た真実――「口座相違」
●狐を名乗る脅迫犯が巧みに突いた銀行の危機管理の陥穽とは――「銀行狐」
●連続レイプ殺人を追う刑事が出会った銀行員のある推理――「ローンカウンター」
以上5作品を収録
銀行総務特命(2002)
◆2015年7月スタート日本テレビ系ドラマ「花咲舞が黙ってない」ドラマ化エピソード収録作 主演:杏◆ 帝都銀行で唯一、行内の不祥事処理を任された指宿修平。顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくり。腐敗した組織が罠を用意しているとも知らずに、指宿は奔走する。「総務特命担当者」の運命はいかに!? 意外な仕掛けに唸らされる傑作ミステリー。
MIST(2002)
標高五百メートル、のどかで風光明媚な高原の町・紫野で、一人の経営者が遺体となって発見された。自殺か、他殺か。難航する捜査を嘲笑うように、第二、第三の事件が続けざまに起きる。その遺体はみな、鋭く喉を掻き切られ、殺人犯の存在を雄弁に物語っていた。”霧”のようにつかめぬ犯人に、紫野でただ一人の警察官・上松五郎が挑む。東京の事件との奇妙な符号に気づく五郎。そして見えてきた驚くべき真相とは−。
仇敵(2003)
エリートバンカーの恋窪商太郎は、いわれなき罪を着せられ大手銀行を辞職、地方銀行の庶務行員となって静かな日々を過ごしていた――元ライバル・桜井の「話したいことがある」という電話に出るまでは。その翌朝知らされた、桜井の怪死。いったい彼は何を告げようとしていたのか。忘れたはずの過去が蘇り、恋窪はやり遂げられなかった「あの男」への復讐を誓う。「いつか必ず、思い知らせてやる」人生を一度あきらめた男の復活劇!
BT ’63(2003)
父が遺した謎の鍵を手にすると、大間木琢磨の視界に広がるのは、40年前の風景だった。若き日の父・史郎が体験した運送会社での新事業開発、秘められた恋……。だが、凶暴な深い闇が史郎に迫っていた。心を病み妻に去られた琢磨は自らの再生をかけ、現代に残る父の足跡を調べる――。父と息子の感動長編。
最終退行(2004)
都市銀行の中でも「負け組」といわれる東京第一銀行の副支店長・蓮沼鶏二は、しめつけを図る本部と、不況に苦しむ取引先や現場行員との板挟みにあっていた。一方かつての頭取は、バブル期の放漫経営の責任もとらず、会長としてなおも私腹を肥やそうとしていた。リストラされた行員が会長を陥れるべく罠をしかけるが、蓮沼はその攻防から大がかりな不正の匂いをかぎつけ――? 現代社会の構造的欠陥を浮き彫りにする長編ミステリー!
株価暴落(2004)
破綻か。救済か。これは、銀行の威信を賭けた闘いだ! 巨大スーパー・一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、一風堂の緊急巨額支援要請をめぐり、白水銀行審査部の板東洋史は企画部の二戸哲也と対立する。一方、警視庁の野猿刑事にかかってきたタレコミ電話により、犯人と目された男の父親が、過去に一風堂の強引な出店で自殺に追い込まれていたことが判明する。胸のすく金融エンタテインメント!
スーパーマーケットの連続爆破事件、半沢直樹シリーズのような銀行組織内での攻防、不祥事企業…
これらがともに伏線となり、最後に回収されていくストーリー的はとても楽しめました。
ただ、個人的には登場人物だれにもあまり共感できなかったこと、
くわえて、ラストらへん、特に犯人逮捕のあたりは「どうしてそうなったのか?」ともう少し説明してほしいと思ってしまったかな…。
もちろん十分に面白い作品なのでオススメできますが、池井戸潤小説の中では、やや優先度は下がるかなと感じました。
金融探偵(2004)
失業中の元銀行員・大原次郎は、再就職活動中に金融絡みの難題について相談を受けた。これまでの経験と知識を生かし、怪事件を鮮やかに解決していく。出納記録だけの謎めいたノートの持ち主を推理するスリル満点の「誰のノート?」他全七篇。ミステリー連作集。
銀行仕置人(2005)
通称“座敷牢”。関東シティ銀行・人事部付、黒部一石の現在の職場だ。五百億円もの巨額融資が焦げ付き、黒部はその責任を一身に負わされた格好で、エリートコースから外された。やがて黒部は、自分を罠に嵌めた一派の存在と、その陰謀に気付く。嘆いていても始まらない。身内の不正を暴くこと―それしか復権への道はない。メガバンクの巨悪にひとり立ち向かう、孤独な復讐劇が始まった。
シャイロックの子供たち(2006)
「半沢直樹」シリーズのドラマ化で大ブレイクした著者が、「ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と語る本作。とある銀行の支店で起きた現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪!? “叩き上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上がらない成績……事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮らすことの幸福と困難さを鮮烈に描いた傑作群像劇。
空飛ぶタイヤ(2006)
走行中のトレーラーのタイヤが外れ歩行者の母子を直撃した。車両の製造元であるホープ自動車が出した結論は、「運送会社の整備不良」。納得できない運送会社社長・赤松徳郎は、真相を追及しようとする。赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況に陥るが……!?
三菱自動車リコール隠しという、現実の事件が題材となっている傑作小説ですが…とっても面白かった!
合本版で741ページの大作ですが、その分作品としても非常に厚みがあります。
登場人物の描写もとても緻密。主人公に感情移入もできるし、敵役もとことん憎くなることでしょう。
↓ドラマ版『空飛ぶタイヤ』も傑作。Amazonプライム会員なら無料で見れます。
ドラマ版or映画版をすでに見たという人も、ぜひ原作にチャレンジしてみてほしいです。
私自身もすでにドラマ版をみていましたが、それでもハラハラドキドキ楽しめました。
鉄の骨(2009)
中堅ゼネコンの若手、富島平太が異動した先は、“談合課”と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。
恋人の萌との関係もぎくしゃくし、悩みはつきない平太。技術力を武器に、真正面から地下鉄工事の入札に挑もうとする平太らの前に、「談合」の壁が立ちはだかる。
組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治文学新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!
『鉄の骨』で描かれるのは多くの人が知らないであろう「談合」の世界。
主人公である富島平太と彼の上司たち、建設業界の影のフィクサー三橋など登場人物が魅力的な作品です。
くわえて注目したいのが、富島の恋人、萌の悪女っぷり(笑)
すれ違っていく恋の行方も気になりすぎて、長めの作品ではあるのですがあっという間に聴いてしまうことでしょう。
かばん屋の相続(2011)
働く男たちの愛憎、葛藤を描いた文春文庫オリジナル短編集。池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに? 表題作他、五編収録。
ルーズヴェルト・ゲーム(2012)
大手ライバル企業に攻勢をかけられ、業績不振にあえぐ青島製作所。リストラが始まり、歴史ある野球部も、存続を疑問視する声が上がる。廃部にすればコストは浮くが、この名門チームには、社員の夢が詰まっていた――。社長が、選手が、監督が、技術者が、それぞれの人生とプライドをかけて挑む、「奇跡の大逆転(ルーズヴェルト・ゲーム)」とは? 唐沢寿明さん主演で感動のドラマ化。三上役の俳優・石丸幹二さんによる朗読版です!
野球アニメやドラマが好き!という人に特にオススメするのが、社会人野球部をテーマとした『ルーズヴェルト・ゲーム』です。
ナレーターは、ドラマ版で三上役を演じた石丸幹二さん。これもまたすごく上手なので一聴の価値があります。
ストーリー的にも十分楽しめるとは思いますが、【★3】の他の池井戸作品と比べると素直に事が進みすぎること、また物語の深さとしてもやや物足りないと感じました。
七つの会議(2012)
きっかけはパワハラだった。万年係長がエリート課長を社内委員会に訴える。しかし役員会が下したのは、不可解な人事。二人に何かあったのか。この会社には何が起きているのか――。
夢は捨てろ。会社のために、魂を売れ。”働くこと”の意味に迫る、傑作クライム・ノベル!
顧客のことを考えずに、自社の利益しか考えない会社の方針に嫌気が差している…
ちょっとでもそんなことを思っていたら絶対にハマるのが、傑作『七つの会議』です。
舞台となる東京建電もその親会社のゼノックスもとにかく腐敗しまくっており、「この件、隠蔽する」「この会議に、議事録はない!」といった“逆名言”が満載。
映画化もされているのですが、原作は少し違うので映画を見た人でも十分楽しめること間違いありません。
↓映画版『七つの会議』もとてもオススメ。Amazonプライム会員なら無料で見れます。
ようこそ、わが家へ(2013)
駅のホームで無礼な割り込み男を注意したその日から、平凡な会社員・倉田太一に対する嫌がらせが始まった。花壇は踏み荒らされ、部屋からは盗聴器まで見つかる。執拗に続くストーカーの攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、倉田一家はついに対決を決意する。一方職場でも、倉田は窮地に追い込まれ――?“日常に潜む恐怖”を描くサスペンス長編!
池井戸作品は面白いし好きだけど、会社を舞台にした作品はちょっと飽きたかも…
別のテイストの作品はないかな?
そんなあなたにオススメなのが『ようこそ、わが家へ』です。
いや、この作品も会社も舞台ではあるんですが、それ以上に主人公に降りかかるストーカー問題に、家族で一致団結して立ち向かうのが一番の見どころ。
あとは、主人公が池井戸潤小説のなかで“最弱”と評されるくらい、出世競争から降り、銀行から出向したとあるサラリーマンの人生がテーマになっています。
筆者のような凡人にとっては、そんな主人公だからこそ共感できる部分がたくさんありました。
犯人は誰か!?というサスペンス的な感じなので、先が気になりすぎて、あっという間に聴き進めてしまうこと必須。
陸王(2016)
勝利を、信じろ。
埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、足袋作り百年の老舗。日々資金繰りに頭を悩ませる宮沢社長は、足袋製造の技術を生かしたランニングシューズの開発を思いつく。
伝統と情熱、そして仲間との強い結びつきで、こはぜ屋は一世一代の大勝負に打って出る! ドラマ化(TBS日曜劇場 主演:役所広司)でも話題を呼んだ、感動の物語。
池井戸潤先生の代表作の1つ『陸王』は、聴いて絶対に損しない傑作。
細かくはネタバレになってしまうので控えますが…飯山顧問の仕事への執念、こはぜ屋の買収話の展開などなど、名言連発。考えさせられるところも多い作品です。
(クライマックス直前、茂木選手のセリフ。ストーリーを追っていくと、かなりグッときます)
「今のこはぜ屋さんは、いってみれば2年前のオレと同じなんです。ピンチで困り果て、必死で這い上がろうともがき苦しんでいる。もし、それを理由にオレがこのシューズを履かなかったら、それはオレが苦しい時に背を向けた連中と、自分が同じことをすることになる。オレはそうしたくない。オレは自分が信じようとしたものを、ずっと信じていたい。もしこのシューズを履かなかったら、それは自分自身を裏切ることになってしまうんです」
『陸王』池井戸潤 著
○よい感想
下町ロケットと同じように、本当に小さな会社が大手と戦う。
そして、池井戸潤を読んだ方はわかるように必ず、読後、清々しい気持ちにしてくれる。
たしかにロケットと足袋では、全然、内容も違います。
ただ、モノづくりに対する理念は同じ。
たしかに、池井戸潤の作品は読者のかたならわかるように、結果的にはいつもの展開。
でも、やっぱり何か新しいと感じさせられます。
それはネタバレになってしまうので詳細は書きませんが、個人、個人が抱えている悩み、挫折、葛藤、再生、それが下町ロケットとはかなり異なると思います。
とても細かく描写されています。
同じモノづくりでもロケットと靴はコスト、規模、全部、異なります。でも、結果はおなじみのパターン。
でも、やはり斬新さを感じれるのは、今回の作品には、挫折をどう乗り越えるか、個人、個人の抱えている過去、現在があり、とても人間らしいところに焦点が当てられています。
ロケットと靴、だから、靴のほうが身近だから感じれるのではなく、人間が描かれているのです。
それは、誰もが少なからず抱えたことのある感情がどの登場人物にも織り込まれているからだろう。
下町ロケットやアキラとアキラなど池井戸潤作品はどれも面白いい。
だが、この作品は結果はどうであれ、やはり新しさを感じずにはいられない。
●悪い感想
池井戸さんの本をいくつか読んでみて,これもそうですが,善人と悪役がはっきりしすぎていてつまらなかったです。悪役は,これでもかというくらい嫌~な人物で,そして必ず最後はその悪役がギャフンといわされる。子供向けストーリー展開を,ビジネスに置き換えたような印象を受けた。専門分野を知識のない人でも楽しめるように書くセンスは素敵だけど,読んでいて,どれも最終着地(主人公その他善人キャラはハッピー,夢が叶う,悪役は沈んでいく)が丸見えで,やっぱりそうなるのかと最後は残念な気持ちになる。
↓ドラマ版『陸王』もオススメ。ただ原作に結構忠実なので、まずは原作からぜひ楽しんでもらいたい。Amazonプライム会員なら無料で見れます。
アキラとあきら(2017)
零細企業の息子・山崎瑛(あきら)と大手海運会社の御曹司・階堂彬(あきら)。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出逢い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった――! 感動の青春巨編!
この作品の最大の特徴は、主人公である2人の青年の子ども時代〜大人までが描かれていること。
池井戸潤お得意の経済小説としての面白さはもちろんのこと、2人の主人公の成長譚としても楽しめます。
物語の濃密さだけだと文句なしの傑作なのですが、結末のあたりがやや盛り上がりにかけるか…と個人的には感じました。
けれども、十分楽しんでいただけると思います。
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ノーサイド・ゲーム(2019)
大手自動車メーカーのエリート社員・君嶋隼人は、横浜工場の総務部長に左遷させられ、ラグビー部アストロズのゼネラルマネージャーを兼務することに。かつて強豪としてならしたチームもいまは鳴かず飛ばず、巨額の赤字を垂れ流していた。アストロズを再生せよ――。ラグビーに何の興味も知識もなかった君嶋が、お荷物チームの再建に挑む! ラグビーという名の熱狂を、大泉洋さん主演でドラマ化。
『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』など池井戸潤の代表作はすべて、Amazonの“聴く読書”Audible(オーディブル)で聴き放題で聴けます。
»オーディブルで“聴き放題対象”の池井戸潤作品をチェックする
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