【書評】『もしアドラーが上司だったら』要約・まとめ・感想|自信を失っているすべての人、必読の1冊

アドラー心理学

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「アドラー心理学を実践するコツを知りたい」
「他人と比較してばかりで苦しい」
「仕事がうまくいかなくて自信を失っている」

そんなあなたにおすすめな『もしアドラーが上司だったら』を徹底レビュー。この本のポイントや魅力がわかります。

著:小倉 広
¥1,188 (2022/08/26 21:38時点 | Amazon調べ)
  • 書籍名:もしアドラーが上司だったら
  • 著者:小倉 広
  • 出版社 ‏ : ‎ プレジデント社
  • 発売日 ‏ : ‎ 2017/3/11
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 272ページ

対人関係の悩みを解決し、仕事で結果を出す方法をアドラーが教えます!
「嫌われる勇気」を実践して職場で嫌われる人が増加中……。
アドラー心理学は対人関係の悩みを一掃する強力な「武器」ですが、職場でアドラー心理学を当てはめるには「コツ」があります。その方法を小説仕立てで教えるのが本書。
ダメダメ営業マンのリョウが、上司のドラさんが出す12の宿題を実行していくと、どんどん仕事が楽しくなっていって、結果も出るように──。主人公の成長物語に笑ったり、共感したりしながら、読んでいるだけで職場の対人関係の悩みが晴れ、仕事で結果を出す方法も手に入る、実用エンターテインメント小説です。

Amazon内容紹介より


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【書評】『もしアドラーが上司だったら』まとめ・要約・感想・口コミ

要約・ポイント

1. 困難という上り坂を登るための心のガソリンが「勇気」である

「ドラさん、わかりました!今回の件は『失敗』という面もあるけれど『経験』という面もある。どちらも本当です。『経験』は、こじつけなんかじゃない。そして、どちらにより注目を与えるかはボクが決めることができる。『豚もおだてりゃ木に登る』でしたね」
「そう。その通りだ。よく覚えていたね、リョウ君。人が困難という上り坂を登るには心のガソリンが必要だ。それをアドラー心理学では『勇気』と呼ぶ。困難を克服する活力、心のガソリンが勇気だ」「もし、キミが今回の件で『失敗』という面ばかりに注目をすればするほど、心のガソリン、勇気は減っていくだろう。その結果、キミの挽回するエネルギーが奪われていく」「しかし、キミがきちんと『経験』という側面に注目を与えれば心のガソリン、勇気は増えていく。つまり、挽回するエネルギーが高まるに違いない。さあ、キミがしたいのはどっちだい?」

『もしアドラーが上司だったら』第二章

2. 「やりたくない」ならやめる。「やりたい」ならやる。「やらされている」と嘘をつかない

「やったほうがマシ。つまりは、キミが選んでいるんだろう?提案書をつくるほうをキミは『やりたい』んだろう?キミの仕事は『やるべき』『やらされている』仕事なんかじゃない。『自分で選んだ』『やりたい』仕事なんだ。じゃあ、やればいいじゃないか」〔…〕
「いいかい。ハヤト君、リョウ君。アドラー心理学では『やりたいけどできない』を人生の嘘と呼ぶんだ。それは単に『やりたくない』だけだ。『痩せたいけど食べたい』んじゃない。単に『食べたい』んだ。人間は一つだ。意識と無意識が葛藤することはない。これをアドラー心理学では『全体論』と呼ぶんだよ」「キミたちが葛藤していた『山盛りの仕事はしたくない』けれど『今の仕事は続けたい』なんていうのは葛藤じゃないんだ。『やりたくないからやらない』『今の仕事を続けたいから山盛りの仕事も片付けたい』そのどちらかなんだ」

『もしアドラーが上司だったら』第四章

3. 機能価値と存在価値をごちゃ混ぜにするから苦しい

「いいかい、リョウ君。キミはね『機能価値』と『存在価値』をごちゃ混ぜにしてしまっているんだ。言葉を換えるなら『Doing(やり方)』と『Being(あり方)』と言ってもいい。キミは『Doing』が上手でなくて『機能価値』をうまく発揮できていないだけだ」
「でも、そんなものは経験と訓練と努力で、いかようにでも変えることはできる。焦る必要なんかない。ましてや、自己否定する必要なんかみじんもない。なのに、キミはそれだけのことなのに、なんと、キミの大切な、大切な『Being』つまりは『存在価値』までも否定してしまっている。『営業成績が悪い人は人間としてダメな存在、劣った存在だ』と自分で自分の人格までをも否定してしまっているんだ。それは大きな間違いだ」
「キミは、キミでいい。キミは今のままで素晴らしい。売れようが売れまいが、欠点があろうが関係ない。『Being』としてキミの『存在価値』は何一つそんなくだらないことで傷つけてはならない。キミは素晴らしいんだ。ボクはキミが大好きだよ!」

『もしアドラーが上司だったら』第五章

4. 貢献できたとき、社会に居場所が見つかり安らぎを感じる。それが「共同体感覚」

「アドラー心理学ではこう考える。人は弱い動物だ。牙も鋭い爪もない。だからこそ、助け合い協力しあわねば生きていけない。自分一人だけ良ければいい、と考える人は生きていけないんだ」
「だから、ボクたちにとって誰かの役に立つ、つまり貢献することが最も大切だ。そして、貢献ができたとき、ボクたちは社会の中に居場所が見つかり安らぎを感じる。アドラー心理学ではそれを『共同体感覚』という。つまり自分のことと同じように相手や共同体を大切にする感覚だ〔…〕」
「それはわかりますけど。でも、ツヨシはそんなボクをバカにして笑い者にしました。イチローは、まったくの知らんぷりです。『共同体感覚』とやらが大切なのはわかりますけど、ボクの独り相撲では成り立たないのではないですか?感謝もされずバカにされるくらいなら、やらないほうがマシです」
「それだよ、それ!『共同体感覚』で大切なのは、それなんだ。独り相撲でいい。いや、むしろ独り相撲でなくてはダメなんだ。相手からほめられ、認められることを求めてはいけない〔…〕全員から感謝されることなんて不可能なんだよ。もしも全員に喜ばれようとすれば、相手の顔色をうかがってばかりで、貢献なんてできっこない」
「だからね。拒絶されても、バカにされても、無視されてもいいんだ。キミがキミなりの善意で『相手のため』と信じて行動したのであればそれでいいんだ。独り相撲でいいんだよ!」

『もしアドラーが上司だったら』第八章

5. より大きな共同体の声を聴け

「ユウ!ちょっと教えてほしいことがあるんだ」
ユウは、ニッコリ笑うと、いいよ、と気安い調子で答え、打合せスペースに腰掛けてくれた。
「あのさぁ。共同体感覚ってあるだろ。あれ、例えば目の前の人が不正を犯しているのを見つけたとしようか。自分よりも相手のことを思いやって、それを内緒にしておくほうが共同体感覚に沿っているんだろうか?それとも、それをやめさせるほうが共同体感覚に近いんだろうか?ねぇ、どっちだと思う?」
ユウは意外な質問に驚いたのか、一瞬、無言になった後に、ゆっくりと口を開いた。
「リョウの身に、いったい何があったのかはわからないけど。アドラーはこう言っているよ。『相反する社会要求の複雑な問題に対しては、永遠の視点から見るように。そうすれば、抗しがたい要求、恐れからくる誤った物の見方、不安やゆがんだ目的から離れて社会生活の基本的なルールを考えることができる』とね」
「例えば、目の前の人の利益を優先するのではなく、学校や会社全体を。また、学校や会社の利益を守ることよりも、さらに大きな共同体として社会全般や国全体の利益を。そして国よりも世界や宇宙全体の利益を。そう考えれば判断を間違わない」

『もしアドラーが上司だったら』第十章

感想・書評

読んでいるだけで、どんどん自分が勇気づけられていく


『もしアドラーが上司だったら』に出会ったのはかれこれ5年前。はじめて読んだときにすごく感動したことを覚えています。当時の自分はアドラー心理学を学び出して数年が経っていましたが、「勇気づけってこういうことなのか!」と、ストンと腹落ちできた気がしました。

というのもこの本は単なるアドラー心理学の入門書というだけでなく、読んでいるだけで自分自身がどんどん勇気づけられていく1冊だから。なかでも仕事などで悩んでいる人には、めちゃくちゃ響くことでしょう。(私も仕事のことで相談されたときに、何度かこの本を贈ったことがあります)

とか言いながら、記事を書くにあたり数年ぶりに読み返してみると、なかなかにストレートで青臭い描写も多く、小っ恥ずかしい気持ちになったのも正直なところ…。

しかしながらアドラー心理学の根底にあるのは、生まれたてのわが子をぎゅーっと抱きしめるかのように、自分や相手を丸ごと受け容れる“愛”なんだよなぁということを再認識させられます。

アドラー心理学は『嫌われる勇気』のインパクトがやはり強く、なんとなく冷たい印象を持たれている人も多いと思うのですが、そうしたイメージはこの本を読むとまったく覆ることでしょう。



存在価値と機能価値


この本のなかで私がとくに好きなのが、第五章「機能価値」と「存在価値」のエピソードです。(これらはアドラー心理学の用語ではないのですが、元ネタがイマイチわからないので、知っている人がいらっしゃればよければ教えてください)

機能価値というのは、人間の能力・できること(Doing)の価値をいいます。たとえば就職活動では「自分の市場価値を高めよう!」などと煽られまくるわけですが、「あなたが稼げる金額=あなたの価値」というのは、まさに機能価値的な見方の典型例です。

資本主義社会では、機能価値の物語にどっぷり浸かっている人がたくさんいます。しかし、これは1つのゲームなのだと割り切ってつき合っていった方が身のためです。なぜなら「機能が低い人は価値がない」「自分はあの人より劣っている」という発想にどうしてもなりがちだからです。

できる・できない(機能)というのは、それこそ事故に遭って今までできていたことができなくなることだってありますし、生まれながらの障害によって最初から可能性を絶たれている人だっています。そういったものに“個人が存在する価値や意味”をゆだねすぎると、すごく不安定だし危険だし、途端に人生が苦しくなるということが、ご理解いただけるのではないでしょうか。

それに対して、存在そのもの(Being)に価値があるとするのが存在価値の考え方。つまり、生きているだけで価値があるということ。これは人間の機能によって揺らぐものではありません。

この本では上司と部下の関係が描かれていますが、親と子、あるいは教師と生徒の関係では存在価値を認めることがより重要になってくることでしょう。「成績が振るわなくとも、素行が悪くとも、あなたには生きているだけで十分価値がある」この土台にしっかり立てるかどうかが、まさに教育という行為の運命の分かれ道なのです。

自分も他者も丸ごと愛し、受容する。これは決して大袈裟ではなく、アドラーという人物がもっていた人間観に他なりません。アドラー心理学と聞くと、“課題の分離”や“嫌われる勇気”のように、どこか個人主義的で冷たい側面ばかりが強調されがち。『もしアドラーが上司だったら』は、アドラー心理学って実はこんなにあたたかいんだ!と、身をもって体感できる1冊です。

◆第一章 自分を追い込んでも、やる気が続かないんです
◆第二章 失敗から目をそらすなんて、できません
◆第三章 カラ元気を出すのに疲れちゃいました……
◆第四章 やらなくちゃならない仕事が山積み
◆第五章 成績の悪い僕は劣っている。負けている
◆第六章 自分を追い込んで、やっとできるようになったんです
◆第七章 自分を勇気づける、次のステップとはなんだろう?
◆第八章 誰かを喜ばせようとしても、無視されたりバカにされるんです
◆第九章 自分の意見だけでなく、存在までも否定された……
◆第十章 目の前の人のため、が共同体感覚なんですか?
◆第十一章 あなたを信じていたのに……
◆第十二章 課長なのに、頑張らなくてもいいの?

まとめ

読むと自分にも人にもきっとやさしくなれる1冊。

本のなかにもありますが、「自己受容=自分に甘くなる」というわけでは決してありません。私自身も自己受容できるようになったことで、ムダに他人と比較したりくよくよ悩んだりしてエネルギーを消費しなくなった分、淡々と自分を追い込めるようになったと感じます。

他者を受け容れる器を手に入れれば、人間関係はスムーズになり、エネルギー消費量はさらに減っていくことでしょう。

今日が人生で一番若い日。自分も他者も丸ごと“受容”する感覚をあじわい、ブレない自信を身につけたい人は、ぜひこの本を手に取ってみられてください。

著:小倉 広
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◆第一章 自分を追い込んでも、やる気が続かないんです
◆第二章 失敗から目をそらすなんて、できません
◆第三章 カラ元気を出すのに疲れちゃいました……
◆第四章 やらなくちゃならない仕事が山積み
◆第五章 成績の悪い僕は劣っている。負けている
◆第六章 自分を追い込んで、やっとできるようになったんです
◆第七章 自分を勇気づける、次のステップとはなんだろう?
◆第八章 誰かを喜ばせようとしても、無視されたりバカにされるんです
◆第九章 自分の意見だけでなく、存在までも否定された……
◆第十章 目の前の人のため、が共同体感覚なんですか?
◆第十一章 あなたを信じていたのに……
◆第十二章 課長なのに、頑張らなくてもいいの?


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