手のひらに乗るほど小さいのに、心全体を包み込むような不思議なあたたかさ。
ページをめくるたびに、マーガレット・ワイズ・ブラウンの物語にガース・ウィリアムズの柔らかなタッチと谷川俊太郎のリズミカルな言葉が溶け合って、日常の何気ない瞬間に宿る幸せを描き出す。
『ちっちゃな ほわほわかぞく』(原題:Little Fur Family、1946年)は、マーガレット・ワイズ・ブラウン作、福音館書店刊。
おすすめ年齢:2歳から

ほわほわ かぞくが いたってさ
あったかいんだ こたつみたいに
ちっちゃいんだって だれよりも
ふかふか けがわを きていてね
ぬくぬくの きに すんでいた
声に出して読むと、不思議と心が弾む絵本だ。
ストーリーはシンプルで、ぬくぬくの木に住むほわほわかぞくの子どもが「ざわざわもり」へ出かけ、森でほわほわおじいさんと出会い、「おだいじに」という言葉を覚える。
川では「けがわを きていない」魚を眺め、空を飛ぶてんとう虫を見上げ、森の奥で「ちっちゃな ほわほわのなかま」と出会って家に帰る。
単調に見えるこの展開が、実は子どもの世界そのものなのだろう。
ほわほわくんが魚を「けがわを きていない」と不思議そうに見つめる場面と、川遊びで脚の少し生えたおたまじゃくしを見つけて目を輝かせていた娘の姿が重なる。
きっと自分にもそんな時代があったのだろうけれども、彼らと同じようにはなかなか驚けない。
けれど、『ちっちゃな ほわほわかぞく』を読んでいると、透き通った童心が静かに戻ってくるようだ。
『あかいひかり みどりのひかり』でもそうだったが、マーガレット・ワイズ・ブラウンの作品には「これを教えよう」という意図がないからだろう。分析的に読もうとする隙を与えず、ただ純粋に体験させてくれる。
ガース・ウィリアムズの絵も、技巧を見せつけるのではなく、子どもが世界を見る時のやさしいまなざしをそのまま表現している。
物語の終盤には、穏やかな愛情が宿る。
冒険を終えて家に帰ってきたほわほわくんを迎える家族の姿。疲れた子どもをとうさんがおんぶして寝床へ連れていき、両親が手を握って子守唄を歌う。
そして てを にぎってやって うたを うたってやったってさ
小さな冒険とあたたかな帰り場所。子どもの幸せな1日が、この小さな絵本には詰まっている。この穏やかな時間は、きっと子どもの心の中に長く残り続けるだろう。
▼ マーガレット・ワイズ・ブラウン(作) ガース・ウィリアムズ(絵)関連書籍
『うさぎのおうち』(訳:松井るり子/ほるぷ出版)

『まんげつのよるまでまちなさい』(訳:まつおか きょうこ/ペンギン社)
