『ベンジーのふねのたび』(マーガレット・ブロイ・グレアム)

絵本

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「ぼくも船に乗りたかったのに…」
耳の長い茶色の犬、ベンジーの目には切ない思いが浮かんでいます。家族との別れ、思いがけない冒険、そして新しい友情。

「家族」と「冒険」の間で揺れる小さな犬の勇気ある旅は、「自分の力でやってみたい」という子どもの気持ちに寄り添う温かな物語です。

夏の澄んだ青空と輝く海の風景が、読む人の心をさわやかに包み込みます。

おすすめ年齢:4歳から

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あらすじ

『ベンジーのふねのたび』(原題:Benjy’s Boat Trip)は、長い耳としっぽの短い茶色の犬、ベンジーの予想外の冒険を描いた絵本です。

毎年、家族と一緒に旅行を楽しみにしているベンジー。でも今年の夏は大型客船での旅行で、「動物は乗せられない」という決まりのため、メアリおばさんとお留守番をすることになりました。

港で家族を見送るベンジーの目は、さびしさでいっぱい。メアリおばさんと散歩に出たとき、ふと見つけた「家族が乗ったのとそっくりの船」。待ちきれなくなったベンジーは、首輪を外して港へ一目散に走り、タラップをかけ上がって船に乗り込んでしまいます。

でも、それは家族の乗った船ではありませんでした。船の猫ジンジャーに追いかけられ、逃げ込んだ倉庫で疲れて眠ってしまうベンジー。目を覚ましたときには、船はもう港を出た後で…。

見知らぬ船の上、知っている人は誰もいない。背中に不安を感じながらも、ベンジーは自分の力で状況を切り開こうとします。

果たしてベンジーは家族の元に戻れるのでしょうか?そして、敵対していた船の猫ジンジャーとの関係は、どのように変わっていくのでしょうか?


小さな犬の大きな冒険―不安から安心への物語

船の旅は大人でもわくわくする特別な体験。ましてや子どもにとっては、その魅力は何倍にも膨らみます。実際に船旅を経験したことがない子どもたちにとっては、この絵本は想像の扉を開く鍵となるでしょう。

物語の始まりは、家族との一時的なお別れです。ベンジーの目に映るさびしさは、誰もが一度は感じたことのある「おいていかれる不安」とひびき合います。

でも、ここで目を引くのはその後のベンジーの行動。さびしさを抱えながらも、メアリおばさんとの散歩中に首輪を外して港の船に飛び乗るという思い切った選択をするのです。

この物語を読むとき、ぜひベンジーの表情の変化を見てみてください。

最初は不安とさびしさでいっぱいだった顔が、船での冒険を通じて少しずつ変わっていきます。新しい場所で自分の居場所を見つけ、人との信頼を築いていくうちに、顔つきが柔らかくなっていく様子は、子どもの育ちそのものを映しているようです。

このベンジーの姿は、私たちの子どもたちの日々のようすとも重なります。

時に心配をかけるような行動をとる子どもたちも、その心の奥には「かまってほしい」「一緒に遊んでほしい」という思いが隠れていることもあります。ベンジーを通して、子どもの心の動きに触れられることも、この絵本の大きな魅力といえるかもしれません。

シンプルながら表情ゆたかな絵も見どころの1つ。淡い色あいの色鉛筆で描かれたような温かみのある絵は、ベンジーの気持ちを優しく表現しています。

また、海と空の青さ、波の動きなど、自然の生き生きとした様子が美しく描かれており、読者を物語の世界へと自然に引き込んでいきます。

そして、この物語をより豊かにしているのが、もう1人の主役、猫のジンジャーです。周りの人や動物がにこやかな顔をしている中、ジンジャーだけがしわくちゃでこわい顔をしています。

でも、そのユニークな表情がかえって愛らしく、物語に深みを与えます。さらに、ベンジーとジンジャーの関係の変化は、「最初はこわかった相手が、実はすてきな友だちになる」という子どもたちへの大切な気づきにもつながっていくようです。

冒険の終わりに待っているのは、やっぱり家族との温かな再会。この結末は「冒険も素敵だけれど、家族と一緒にいることが一番しあわせ」というメッセージを優しく伝えています。

子どもたちに「世界は広いよ」と語りかけながらも、「でも、あなたの帰る場所はいつでもここにあるよ」と安心感を与えてくれる、そんな心温まる絵本に仕上がっています。

著者紹介

マーガレット・ブロイ・グレアム(1920-2015)はカナダ・トロント生まれの絵本作家で、特にイラストレーターとして高い評価を受けました。彼女の代表作は、元夫ジーン・ザイオンの文による『どろんこハリー』シリーズのイラストです。

トロント大学で美術史を学んだ後、ニューヨークでアーティストとしてのキャリアをスタート。コンデナスト社で出会ったザイオンと結婚し、『どろんこハリー』『はちうえはぼくにまかせて』など多くの名作を生み出しました。

1968年の離婚後、グレアムは自ら文も手がけるようになり、『ヘレン、ようこそどうぶつえんへ』(Be Nice to Spiders)で作家デビュー。その後、独自のキャラクター「ベンジー」シリーズを展開し、本作『ベンジーのふねのたび』(1977年)はその人気シリーズの1冊です。

関連書籍紹介

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著:マーガレット・ブロイ・グレアム, イラスト:マーガレット・ブロイ・グレアム, 翻訳:ともの ふゆひこ
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