あくたれねこの ラルフは、セイラの ねこでした。
あくたれでも、セイラは、ラルフが すきでした。
真っ赤な毛色に、いたずらっぽく光る目。ページをめくるたびに繰り出される、とんでもないいたずらの数々に、子どもも大人も目を丸くする。
『あくたれ ラルフ』(原題:Rotten Ralph、1976年)は、セイラという女の子と、彼女が飼っているとびきりのあくたれねこの物語。
おすすめ年齢:4歳から

ラルフのデンジャラスなあくたれぶり。
セイラの乗っているぶらんこの枝をちょん切り、お父さんのパイプでしゃぼん玉を作り、自転車でダイニングルームに乗り込み、料理に頭から突っ込む。それでもやさしいセイラは、いつも「ラルフ、だいすき」と言ってくれる。
ところが、家族でサーカスを見に行った日、ラルフはついに一線を越えてしまい、とうとうお父さんに怒られてサーカスに置き去りにされてしまう。サーカスで初めて味わう「さびしさ」が、ラルフの心に変化をもたらしていく。
夏休み、娘と過ごす毎日にラルフが重なる。幼稚園で覚えてきたいたずらを繰り返し、注意してもやめない姿に困り果てることも。
でも、この絵本を読み重ねるうちに、ちょっとした変化を感じるようになった。ラルフがサーカスに置き去りにされ、痩せ細って寂しい思いをする場面で、子どもも「あ、これはいけないことなんだ」と感じるようだ。
叱り方やしつけは本当に難しい。けれど、この本は親にとっても救いになる。いたずらが過ぎた時、「あくたれ〇〇ちゃんね」と冗談めかして注意することで、叱ることと愛することが自然に両立できる。
その言葉にはラルフを愛するセイラのような温かさが込められ、最後は「どんなあなたでも大好きなのよ!」と抱きしめたくなる。(同時に「でも、あくたれすぎは勘弁してね」という牽制もできるはず…)
絵のタッチは一見ラフに見えるが、イラストレーターのニコール・ルーベルは正統派の美術教育を受けた画家。あえて選んだこの「ヘタウマ」な表現が、子どもらしい親しみやすさを生み出し、ラルフの魅力をよく表現している。
作者はジャック・ガントス、翻訳は石井桃子。原題「Rotten Ralph」を「あくたれ ラルフ」と訳したのも上手い。「腐った」という強い響きが、愛嬌のある「あくたれ」になるなんて。
この作品は約20冊のシリーズの第1作。ラルフにすっかり魅力を感じて、他の作品も読んでみたくなった。


