【書評】『歌われなかった海賊へ』逢坂冬馬「究極の悪」に反抗した少年少女の物語

小説・文学

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NHK「映像の世紀」の中で、不思議と脳裏に焼き付いている映像がある。敗戦後のドイツ、強制収容所への訪問を義務付けられた国民。涙を流す人、顔を隠して駆け抜ける人々の姿。『歌われなかった海賊へ』は、あのたった数十秒の映像が伝えていたことについて、改めて考え直す契機を与えてくれた。

1944年、終戦が迫るナチス支配下のドイツで、自由を求め反旗を翻した若者たちの姿を追う。ヴェルナー、レオ、フリーデの3人が中心となり展開する物語は、ただの若者の反抗記ではない。線路の先に広がる残酷な現実と対峙する中で、何が真の勇気かを深く掘り下げる。

作品の魂は、一見普通の大人たちに内在する加害性と、それに立ち向かう子どもたちの純粋な正義感の対比にある。戦況によって態度をがらりと変え、自己保身へと醜く走るナチス側の大人たち。対照的に、エーデルヴァイス海賊団に名を連ねる子どもたちは、困難に直面しても信念を曲げない。彼らの姿勢は、大人たちの日和見ひよりみ主義に鋭い一撃を加える。

物語はまた、深い内省を促す。隣町にナチスの強制収容所があったら、自分はどうするか——この挑戦的な問いかけは、読み終えても心を離れず、社会的圧力の中での個人の行動や倫理の重要性を考えさせる。一人ひとりの選択が、いかに歴史を形作るか、そして小さな勇気が大きな変革をもたらす可能性を、読者に説く。

作中作の巧妙なギミックも見逃せない。耳慣れないドイツの名前が並んで不安がよぎる序章も、物語を一読した後には全く異なるものに映る。逢坂冬馬は、読者を物語の奥深くへといざない、再発見の喜びを提供してくれるのだ。

歴史のページから現代へと問いを投げかけるこの物語は、読者の心に深い余韻を残す。勇気と誇りをめぐる思索の旅は、レールの向こう側へと続いていく。

著:逢坂 冬馬
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