【サピエンス全史】認知革命とは、虚構とは。わかりやすく解説&考察

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「サピエンス全史で述べられている“認知革命”や“虚構”について知りたい」
「『サピエンス全史』ってどんな本?」


そんなあなたのために、名著『サピエンス全史』を読みながら“認知革命”と“虚構”についてわかりやすく解説&考察。この記事を読めばこれら用語のポイントがわかります。

今回は世界2000万部を突破した大ベストセラー『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(原題:Sapiens: A Brief History of Humankind.)の第1部「認知革命」のポイントを簡潔に要約しつつ、認知革命や虚構について独自に考察していきます。

著:ユヴァル・ノア・ハラリ, 翻訳:柴田裕之
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  • 書籍名:サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(原題:Sapiens : A Brief History of Humankind.)
  • 著者:ユヴァル・ノア・ハラリ
  • 出版社 ‏ : ‎ 河出書房新社
  • 発売日 ‏ : ‎2016/9/8
  • 単行本 ‏ : ‎ 上巻:300ページ 下巻:296ページ

なぜ我々はこのような世界に生きているのか?ホモ・サピエンスの歴史を俯瞰することで現代世界を鋭く抉る世界的ベストセラー!

Amazon内容紹介より、一部抜粋


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【サピエンス全史】認知革命とは、虚構とは。わかりやすく解説&考察

ポイント・要約

1. 認知革命とは、7万年から3万年前にかけて、ホモ・サピエンス(=今の私たちと同じ種)に起こった新しい思考と意思疎通の方法の登場のこと

サピエンスは15万年前にはすでに東アフリカで暮らしていた〔…〕太古のサピエンスは外見が私たちにそっくりで、脳も同じぐらい大きかったとはいえ、他の人類種に対して、これといった強みを持たず、とくに精巧な道具も作らず、格別な偉業は何一つ達成しなかった。〔…〕
およそ7万年前から、ホモ・サピエンスは非常に特殊なことを始めた。〔…〕彼らはネアンデルタール人をはじめ、他の人類種をすべて中東から追い払ったばかりか、地球上からも一掃してしまった。サピエンスは驚くほど短い期間でヨーロッパと東アジアに達した。4万5000年ほど前、彼らはどうにかして大海原を渡り、オーストラリア大陸に上陸した。それまでは人類が足を踏み入れたことのない大陸だ。約7万年前から約3万年前にかけて、人類は舟やランプ、弓矢、針を発明した。芸術と呼んで差し支えない最初の品々もこの時期にさかのぼるし、宗教や交易、社会的階層化の最初の明白な証拠にしても同じだ。
ほとんどの研究者は、これらの前例のない偉業は、サピエンスの認知的能力に起こった革命の産物だと考えている。〔…〕7万年前から3万年前にかけて見られた、新しい思考と意思疎通の方法の登場のことを、「認知革命」という。

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ著 p34〜35

2.虚構とは、伝説や神々のようにサピエンス自らがつくりだした架空の事物のこと。認知革命によって私たちは驚くほど柔軟な言語を手に入れ、想像上の概念や物語(虚構)を語れるようになった

私たちの言語が持つ真に比類ない特徴は〔…〕まったく存在しないものについての情報を伝達する能力だ。見たことも、触れたことも、匂いを嗅いだこともない、ありとあらゆる種類の存在について話す能力があるのは、私たちの知るかぎりではサピエンスだけだ。
伝説や神話、神々、宗教は、認知革命に伴って初めて現れた。それまでも、「気をつけろ! ライオンだ!」と言える動物や人類種は多くいた。だがホモ・サピエンスは認知革命のおかげで、「ライオンはわが部族の守護霊だ」と言う能力を獲得した。虚構、すなわち架空の事物について語るこの能力こそが、サピエンスの言語として異彩を放っている。

『サピエンス全史(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ著 p39

3.虚構としてつくり上げた神話や物語を共有することで、私たちは見ず知らずの人と大規模に協力できるようになった

虚構は危険だ。虚構のせいで人は判断を誤ったり、気を逸らされたりしかねない。〔…〕
だが虚構のおかげで、私たちはたんに物事を想像するだけではなく、集団で・・・そうできるようになった。聖書の天地創造の物語や〔…〕近代国家の国民主義の神話のような、共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。アリやミツバチも大勢でいっしょに働けるが、彼らのやり方は融通が利かず、近親者としかうまくいかない。オオカミやチンパンジーはアリよりもはるかに柔軟な形で力を合わせるが、少数のごく親密な個体とでなければ駄目だ。ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。だからこそサピエンスが世界を支配し、アリは私たちの残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められているのだ。

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ著 p40

4.神話や物語は柔軟に書き換えができ、ホモ・サピエンスは生物的な進化を待たずとも、高速に文化的な発展を遂げることができるようになった(この発展のプロセスを、私たちは「歴史」と呼ぶ)

サピエンスが発明した想像上の現実の計り知れない多様性と、そこから生じた行動パターンの多様性はともに、私たちが「文化」と呼ぶものの主要な構成要素だ。いったん登場した文化は、けっして変化と発展をやめなかった。そして、こうした止めようのない変化のことを、私たちは「歴史」と呼ぶ。
したがって、認知革命は歴史が生物学から独立を宣言した時点だ。認知革命までは、すべての人類種の行為は、生物学の領域に属してた。認知革命以降は、ホモ・サピエンスの発展を説明する主要な手段として、歴史的な物語ナラティブが生物学の理論に取って代わる。キリスト教の台頭あるいはフランス革命を理解するには、遺伝子やホルモン、生命体の相互作用を把握するだけでは足りない。考えやイメージ、空想の相互作用も考慮に入れる必要があるのだ。

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ著 p55

5.特別な力を手に入れたホモ・サピエンスは、他の生き物を絶滅に追いやりながら世界を征服した(他の人類種も滅ぼし、およそ1万3000年前には地球に存在する唯一の人類種となった)

サピエンスは認知革命の後、アフロ・ユーラシア大陸1から抜け出して「外界」に移住するのに必要な技術や組織力、ことによると先見の明さえも獲得した。彼らの最初の成果は、約4万5,000年前の、オーストラリア大陸への移住だ。〔…〕
人類によるオーストラリア大陸への初の旅は、歴史上屈指の重要な出来事で、少なくともコロンブスによるアメリカへの航海や、アポロ11号による月面着陸に匹敵する。〔…〕重要なのはこれらの人類の開拓者たちが、この新しい世界でしたことだ。狩猟最終民が初めてオーストラリア大陸に足を踏み入れた瞬間は、ホモ・サピエンスが特定の陸塊で食物連鎖の頂点に立った瞬間であり、それ以降、人類は地球という惑星の歴史上で最も危険な種となった。〔…〕オーストラリアへの移住者、いや、より正確にはオーストラリアの征服者は、ただ適応しただけでなく、この大陸の生態系を、元の面影がないほどまで変えてしまった。

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ著 p88

解説・考察

“虚構”のなかで生きていることへの気づき


『サピエンス全史』において認知革命(約7万年前)は、農業革命(約1.2万年前)科学革命(500年前)と並んで、壮大な人類史を決めた重要な革命の1つであるとされます。

認知革命を理解するための重要な前提として、元々ホモ・サピエンス(=私たちの種)が唯一の人類ではなかったという事実があります。今では “人類=私たち” しかこの世に存在しません。しかし、約200万年前から1万年前ころまで、人類のなかにもホモ・ネアンデルタールシス2やホモ・エレクトスをはじめ、数多くの種が同タイミングでこの地球に共存していました。

しかし、その中でホモ・サピエンスだけが人類種としては唯一生き残っていく3わけですが、“サピエンス一強”となるきっかけこそが、たまたま遺伝子変異で起こったといわれる認知革命、そして虚構の登場だったわけです。

さて、この本の重要テーマの1つが「虚構のなかに生きていること」への気づきです。民主主義、人権、法、資本主義、お金 etc… 私たちが当たり前に正しいと信じているものが、実は人間がにつくり出した虚構にすぎない。認知革命、いうなれば “人間が初めて人間になった瞬間” にまで立ち返ることで、そのことに強く気づかされます。

「いやいや、だからなに?今の社会はそういうルールでやってるんだから、仮にそれらが虚構だとしても従うしかないでしょ」と言ってしまえばその通りかもしれません。たとえば資本主義という神話を大多数の人が信じるなかで「資本主義もお金も、人間が作り出した虚構にすぎない」と言ったところで、生きていくためには日々お金を稼ぐことを止めるわけにはいきません。

しかしそれらを絶対的なものだと信じて疑わないのか、それとも「1つのゲーム、1つの物語にすぎない」ことを理解した上で上手に付き合っていくのかでは、生き方も随分変わってくるのではないでしょうか。なにかを盲信するということは、執着するということ。金銭を巡るトラブル、はたまた宗教戦争など例に挙げるまでもなく、執着は不幸を生み出します。

これらが虚構にすぎないと気づくことで、私たちは執着から脱し、そして自らが生きる物語を選ぶことができるようになります。著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、上座部仏教の修行法であるヴィパッサナー瞑想4の実践者でもありますが、認知革命に関する記述のなかには、そうした仏教的な“気づき”へと通ずるメッセージも込められていると感じます。


認知革命は今でも進行中?(物語が変われば、協力の形も変わる)


認知革命のポイントは、共通の“虚構”を信じることで、人類は大規模に協力できるようになったということ。認知革命が起こったことで、人々が生きる集団の構成人数は、当初数人程度だったものから数千〜数十万〜数億人へと飛躍的に伸びていきました。

このことは組織論の名著『ティール組織』第1部で語られる「組織モデルの歴史と進化」と重ねることで、より奥行きをもって理解できると感じたので紹介します。

著:フレデリック・ラルー, 著:嘉村賢州, 翻訳:鈴木立哉
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『ティール組織』によると「歴史の流れの中で、人類は人々が集まって仕事を成し遂げるやり方を何度も根底から革新し、そのたびに以前よりもはるかに優れた組織モデルを作り出して5」きました。『サピエンス全史』を視野に入れつつ、組織モデルの進化をまとめたのが次の表です。

組織/パラダイムの呼称(時代)組織の特徴/信仰する物語など
※受動的パラダイム6
(10万〜5万年前頃/認知革命以前)
・家族などの血縁関係
・自分を他者や環境から完全には区別してとらえられない
・十数人規模を超えると集団は分解する
神秘的マゼンタパダライム7
(〜1万5千年前頃/認知革命)
・数百人規模の部族
・長老や巫女が力をもち、儀式をとり行う
・世界全体がさまざまな神秘に満ちている
・部族の精霊や天罰を信じる
衝動型レッド組織
(1万年前頃/農業革命)
・最初の首長制、原始的な王国
・規模は数千人〜数万人レベルへ
・他者と自己を区別でき、本格的な分業も可能に
・力こそがすべて
順応型アンバー組織
(紀元前4000年頃〜)
・農業、国家、文明、制度、官僚制、宗教団体の時代へ
・軍隊のような組織
・将来に向けた長期計画、秩序、社会階級
・未来は過去のくり返し
・不変の法則、固定的な道徳的価値を信じる
達成型オレンジ組織
(17世紀後半8〜/科学革命・産業革命)
・イノベーション、起業家精神
・科学信仰、目に見えるものしか信じない、還元主義
・機械のような組織
・実力主義、個人主義、自由主義
・成長、利益信仰
多元型グリーン組織
(19世紀後半〜)
・権限移譲、平等主義
・家族のような組織
・組織の共有価値、心を揺さぶる存在目的
進化型ティール組織
・自らの使命の探求
・対立する概念の統合、全体性に向けた努力
・全体性の部分であり、自然の一部だという覚醒
・ひとつの生命体のような組織
『ティール組織』で示される組織モデルの歴史と進化


なお、これらの組織モデルは年代によって完全に移り変わっていくというものではありません。同じ組織であってもあるときは順応型に、あるときは達成型に…というように時と場合に応じて振る舞いが変わることだってあります。

この表からわかるのは、人類の認知革命は7万年前頃から始まったけれども、認知レベルは絶えず変化・進化しているということ。『サピエンス全史』で注目されている3大革命がそのターニングポイントとなっているのも興味深いです。

また信奉する物語(虚構)が違えば、組織の形(=協力の仕方)も変化するという事実も面白い。当然、これから先まだ聞いたことのない物語が主流となり、それによって新たな組織の形が登場する可能性だってあるわけです。

今日的な課題に当てはめると、現在主流となっている達成型パラダイムの限界がきているのは明らかです。『ティール組織』でも企業の貪欲さや、地球の資源の向こう見ずな浪費など多数の問題点が指摘されています9が、『サピエンス全史』のスケールをみた後だと、我々サピエンスがたった数十年〜数百年でこれだけ地球環境を食い潰してしまってる現状に、より大きな危機感を抱くことでしょう。

SDGsが盛んに叫ばれ、“ポスト資本主義”という言葉も耳にしますが、新たな物語のもと新たな協力の形を模索していかねばならない時期が来ています。加えてこのことを個人レベルに落とすならば、1人1人の個人もまた、どのような物語を生きていくかを問われるということになります。

人類は認知革命によって虚構のなかで生きることを宿命づけられた存在。どうせ虚構を生きるなら、自分自身だけでなく、他者や未来を生きる私たちの子孫、他の生物もが幸せになれる物語を選択したいと私は思います。

あなたはどんな物語を生きていきますか?

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まとめ

自分の今いる場所を、壮大なスケールでメタ認知できる1冊。

『サピエンス全史』から認知革命について学ぶことで、無意識のうちに信奉していた“虚構”に気づくことができます。「なにをこんなちっぽけなことで悩んでいたんだろう」とある種の開き直りとともに、前向きな気持ちが生まれてくることでしょう。私自身は“大河の一滴”にすぎないこの人生を全力で駆け抜けたいと感じました。

今日が人生で一番若い日。『サピエンス全史』はサピエンス(人類)として生きていく以上、一度は手に取る価値のある名著です。未読の方は、ぜひ読んでみられてください。

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◯上巻

第1部 認知革命

第1章 唯一生き延びた人類種
第2章 虚構が協力を可能にした
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
第4章 史上最も危険な種

第2部 農業革命

第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
第6章 神話による社会の拡大
第7章 書記体系の発明
第8章 想像上のヒエラルキーと差別

第3部 人類の統一
第9章 統一へ向かう世界
第10章 最強の征服者、貨幣
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

◯下巻

第12章 宗教という超人間的秩序
第13章 歴史の必然と謎めいた選択

第4部 科学革命

第14章 無知の発見と近代科学の成立
第15章 科学と帝国の融合
第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
第17章 産業の推進力
第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
第19章 文明は人間を幸福にしたのか
第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ


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