【教師のための思想入門】デューイとアドラー編⑤|生き方としての民主主義とは?

哲学

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

▼ 前回の記事はこちら

あらすじ

教員3年目のことはは、本屋「あつゆる書房」の店主あつゆるとデューイの民主主義論について語り合っていた。現代社会の問題点と、それに対するデューイの「グレイト・コミュニティ」という考え方について学ぶ中で、ことははある気づきを得る—。

ことは:あつゆるさん気づいたんですけど、デューイさんの言う民主主義って、もはや人の生き方そのものみたいですね。生活様式だったり、コミュニケーションと直結していたり…。

あつゆる:ことはさん、鋭い!実は、後期デューイの論文『創造的民主主義』で、まさにそのことを扱っているんだ。

ことは:わー!そうなんですか。どんなことを言っているんですか?

あつゆる:デューイは民主主義は「生き方」そのものであると捉え直した(生き方としての民主主義)。彼によれば、民主主義は「個人的な性格を形成し、生活のあらゆる関係における欲望と目的を決定するような、ある態度の所有と継続的な使用を意味する」んだって。

ことは:つまり、民主主義は個人の性格や態度で、生活のなかで実践されるということですよね?

あつゆる:その通り。デューイは、「生き方としての民主主義」をより具体的に説明するのに、次の3つを強調しているよ。

  1. 人種、肌の色、性、生まれにかかわらず、だれにでも可能性があると信じる
  2. 教育、表現の自由、オープンな情報など、条件が整えば、人間は知的な判断ができると信じる
  3. 自分と異なる他者から学び、友好的に協働する、トラブルが起こっても対話で解決する

ことは:なんか…

あつゆる:なんか…?

ことは:綺麗事というか、学校の道徳みたいですね!

あつゆる:言いたいことはすごくわかる!実際デューイ自身も、これが道徳的にありふれたことだって認めているんだ。でも、彼はそれこそが重要だと考えたんだよ。

ことは:えっ?じゃあ、なんでデューイさんはわざわざそんなことを言う必要があったんですか?

あつゆる:それがね、デューイが生きていた時代背景が関係しているんだ。デューイが『創造的民主主義』を書いたのは1939年。ナチスの台頭やスターリンの独裁など、民主主義への脅威が高まっていた時期だったんだ。

ことは:そう言えば、ナチスは民主的な選挙で権力を握ったと聞いたことがあります。

あつゆる:まさにその通り。たとえ制度としての民主主義があったとしても、1人1人が民主的な人格として成長しないと、本当の意味での民主主義は実現できないと考えたわけなんだ。

ことは:なるほど…。民主主義って日々の生活の中で実践していくものなのだとよく伝わってきました。ただ、あまりに理想的な気もしますが。

あつゆる:そうだね。デューイは「民主主義とは、自由で、充実した交流のある生活につけられた名前」だと言っている。理想までには遠い気もするけれど、日々の小さな実践の積み重ねが大切なんだろうね。

(続く)

参考文献
Dewey, J. (1939) Creative Democracy-The Task Before Us. In: Boydston, Jo Ann (ed) (1988) Collected Works of John Dewey, The Later Works, 1925-1953(14): 224-230. Carbondale: Southern Illinois University Press.