カウンセリングの冒頭、クライアントが次々と悩みを語り始めたとき、あなたはどう対応しているだろうか。
「仕事のストレスで眠れないんです。それに夫との関係も最近うまくいっていなくて…子どもの学校のことも心配で…あと、親の介護も始まって…」
話が広がりすぎて、どこから手をつけていいのか分からなくなる——このような経験は、カウンセラーなら誰しも持っているのではないだろうか。
特に初回面接では、クライアントの混沌とした内面世界が一気に溢れ出すことも多い。
先日参加したマリーナ・ブルフシュタイン博士による『ライフスタイル・アドバンス編』のレクチャーで、この状況に対する洞察力に満ちたアプローチを学んだ。
「あなたはどの部分で、一番行き詰まりを感じていますか?」
マリーナ博士はセッションの最初に、この問いかけを大切にしている。
この質問の一語一語には深い意図がある。「どこで」「どこに」と局所的に尋ねることで、漠然とした悩みを具体化していく。
クライアントが「世界が崩壊しそうです」と訴えてきたとき、博士はその感情を矮小化しない。
「あなたの言っていることはその通りですね」と、まずは肯定的に受け止める。
ときに「大袈裟じゃない?」と感じられる表現があったとしても、あくまでクライアントの感覚を大切に扱う。それを否定することは決してない。
すべてを受け止めた上で「あなたがどの部分で、一番行き詰まりを感じていますか?」と尋ねる。
博士が強調するのは、この質問を現在形で、「あなたは」という主語を使うことの重要性だ。
ただし「それはあなたが感じているだけですよ」という言い方はしない。
一番行き詰まっているところを明らかにすることが大切なのであって、クライアントが抱えるその他の問題を軽視するわけではない。この問いかけは、クライアントが自分自身の課題を整理するための手助けとなる。
避けるべき質問
「今日は何を話したいですか?」
多くのカウンセラーがセッションでこう尋ねるが、マリーナ博士によれば、これはあまり良い質問ではないという。
繊細なクライアントは「あなたには私に割く時間があまりないのですね」と受け取りかねないからだ。
また、神経症的な状態にあるクライアントは、「何を選べばいいのか」という新たな難題に直面してしまう。
クライアントは全てのことについて話したいと思っており、全てが等しく重要だと感じている。こうした状況では、セッション全体が進まなくなってしまう。
「あなたがどの部分で、一番行き詰まりを感じていますか?」と尋ねるとき、それ自体がすでにセラピーとなっている。クライアントに優先順位をつけてもらうことで、解決への道筋が見えてくるからだ。
マリーナ博士は言う。「多くの心理学的な問題はスキルのあるなしの問題ではなく、問題に圧倒されて、解決に向かえないことから生じるのです」
混沌とした悩みの中から、1本の糸口を見つけ出す。
この最初の一歩を支えるのが、「あなたがどの部分で、一番行き詰まりを感じていますか?」という問いかけなのだ。