「全体論」ってなに?
「全体論」って何の役に立つの?
このような疑問をもった人へ、アドラー心理学の全体論についてわかりやすく解説。また、全体論を実際の生活に活かすにはどうすればよいかもお伝えします。
この記事を書いている人(@atsukuteyurui)のプロフィールは以下の通り。
全体論の考え方や実践は、心や体の不調の解決や、バランスのとれた自己成長へと導きます。
全体論とは?
全体論とは、人間を分割できない統一体としてとらえる考え方のことです。
※アドラー心理学の正式名称「個人心理学(individual psychology)」。これは、彼が人間は精神と肉体、意識や無意識、などとバラバラには分割できない(in-divide)存在であると考えたことに由来しています。
アドラーは次のように述べています。
私たちの心理学理論の全体、理解の全体、あるいは個人を理解しようとする努力は、私たちが人間は一つの統一体(unity)であると確信できなければ、空虚で無意味なものになってしまうであろう。
“The Science of Living” by Alfred Adler p59
例えば、機械やプラモデルは、バラバラにパーツに分解することができます。そして、バラバラにしたものをもう一度組み直すと、元の姿に戻るわけです。
一方で、アドラー心理学の全体論では「人間を部分に分けて細かく見ても、それで人間の全体像を理解することはできない」と考えるのです。
実際には、便宜的に「意識」「無意識」「精神」「肉体」…みたいに、部分的に分けて考える必要はあります。
しかし、重要なのはいくら網羅的に細かく分けて考えたとしても、それで人間のすべてがわかるわけではないということです。
なお、アドラーは、思想家ヤン・スマッツのホーリズム(Holism)という考え方から強い影響を受けました。
ホーリズムの基本テーゼは、
全体は部分の総和以上のものである
つまり「部分をすべて足し合わせても、全体にはならないよ」という意味です。
機械やプラモデルは、部分(部品)をすべて足し合わせたら全体になります。
人間はそうではないというのが、全体論の考え方です。
この考え方は、ゲシュタルト心理学とも共通しています。
さて、ここまではアドラー心理学の入門書でも書かれている内容です。しかし、これを聞いた時に多くの人は…
で、これをどうやって生活の中で役立たせていけばよいの?
と思うでしょう。実際、この「全体論」の使い方まで説明している人はあまり見たことはありません。
そこで、この記事では「全体論」をどのように生活で活かしていけばよいかについても解説していきます。
【実践編】全体論って、どうやって生活で活かしていくの?
全体論を生活で活かす方法を、4つのステップで紹介します。
全体論を生活で活かす4ステップ
STEP1 人間の全体性を俯瞰的にとらえられる要素に分ける
(※人間の認知では全体性を一気には見ることはできないから)
STEP2 各要素に適したアプローチを、バランスよく取り入れる
STEP3 要素ごとのつながりを意識する
STEP4 すべての要素を足しても、全体性は見れないことに注意する
STEP1 人間を俯瞰的にとらえられる要素に分ける
最初のステップは人間を俯瞰的にとらえられる要素に分けること。
全体論は、人間はバラバラに分けても完全には理解はできないと考えますが、実践の中では人間を要素ごとに分析していくというアプローチをとることになります。
病院で、内科、外科、歯科、眼科…と分かれているのと同じだと考えてください。
便宜上、要素に分けて分析していくというアプローチを取りはしますが、それで人間の全部が理解できるわけではないのです。
そして、このときに、できるだけ人間の全体性を俯瞰的にとらえることを意識します。
例えば、日本人になじみが深い「心・技・体」という分け方。
心技体とは?
精神力(心)・技術(技)・体力(体)の総称。スポーツ界でよく使う。「心技体のバランス」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
これは、人間の全体性とらえるときに、わかりやすく使えるアプローチです。
さらに細かい分け方が、ウィルバーの統合的(インテグラル)アプローチ。
以下の本にくわしく載っています。
体×心×精神性×影。豊かで健全な人生、全人格的発達をもたらす統合的アプローチ。『ティール組織』の理論モデル「インテグラル理論」実践の枠組み。
「BOOK」データベースより
この本では、ボディ・マインド・スピリット・シャドーという4側面から人間をとらえる方法が提案されています。
インテグラルアプローチでの人間の分け方
ボディ:人間の体。グロスボディ・サトルボディ・コーザルボディの3つに分かれる。
マインド:人間の意識。象限・段階・ライン・状態・タイプに分かれる。
スピリット:聖なるもの。宇宙。大いなるもの。全体性。
シャドー:人間の心の暗部。抑圧された無意識のこと
こうしたモデルは、唯一絶対的な正解があるわけではありません。
あくまでも人間は完全には要素に分けることができない前提で、自分なりに使いやすくて納得感のあるモデルを選択すればOKです。
STEP2 各要素に適したアプローチを、バランスよく取り入れる
続いて、要素ごとに適したアプローチを取り入れます。
例えば、「心・技・体」で人間をとらえたときに、以下のように、各要素ごとに目標を立てて、取り組みます。
【実践例】「心・技・体」のそれぞれについて、取り組むべき目標を記入しよう。
また、2つ目に紹介した「インテグラルライフプラクティス」の中では、各要素ごとに大量のワークが紹介されています。(以下はその一覧です)
どこか一つの要素に偏ることなく、全体性を俯瞰して、バランスよく取り組むことが大切です。
インテグラル・ライフ・プラクティスについては、こちらの記事でくわしく書いています。
STEP3 要素ごとのつながりを意識する
次に、要素ごとのつながりを意識します。
アドラーも以下のように、各要素の「相互関係」を強調しています。
われわれは、心も身体も共に生命の表現である、と見ている。それらは、全体としての生命の部分である。われわれは、心と身体の相互関係をその全体の中で理解し始めている。
例えば「メンタルが弱い」という「心」の課題を改善するにはどうすればよいでしょうか?
「メンタルを強くしたい」といくら「心」だけで思っていても、限界があるでしょう。
このとき、毎日コツコツ仕事の技能アップに取り組むこと。つまり「技」へのアプローチによって自信が育まれ、メンタルが強くなることがあります。
さらには、筋トレに取り組んだり、よく寝たりなど「体」のアプローチから、メンタルが強くなるということもあるわけです。
各要素を別々で考えるのではなく、他の要素とのつながりの中で見ていきましょう。
人間は、いろんな要素が複雑に相互作用している、統一体だからです。
STEP4 すべての要素を足しても、全体性は見れないことを忘れない
最後に、すべての要素を足しても全体性は見れないことに注意します。
「全体論」では、人間は統一体であるととらえます。
なので、どれだけ細かい要素に分けて俯瞰的に見て、かつそれらのつながりを意識したとしても、完全な全体性を描くことはできないのです。
つまり、
ということです。
「どれだけがんばっても、人間を完全には理解はできない」という前提に立ちつつ、不確定要素を受け入れ、謙虚さをもって目の前の人間と向き合うことが、最終的には大切です。
全体論を学ぶには
全体論は、頭で理解するだけではなく、実践に移さないと正直あまり意味がありません。
そこで、実践する上でオススメなのが以下の本です。
全体論の考え方を具体的に落とし込んでいるもので、私の知りうる限りもっとも詳しいのがウィルバーの統合的(インテグラル)アプローチです。くわしく網羅的に、そして具体的なワークまで知りたい人は、この一冊を読めば問題ないでしょう。
あわせて読みたい
心と体のつながりを強調しているもので、読みやすいのは以下の本です。すぐに使える実践の宝庫です。なお、白い本と黒い本の違いは、原著では同じ本『Awaken the Giant Within』なので、上下巻だと思ってください。どちらもオススメです。