アドラー心理学を哲学的に研究しているあつくてゆるい(@atsukuteyurui)です。
「クラスの子どもが教師の手を借りなくとも、協力し自分たちで前に進んでいける」そんな学級づくりをしたいと思いませんか?
「クラス会議」を取り入れれば、自分たちのことは自分で解決する、主体的で積極的な学級をつくることができます。
さらに、子ども1人1人が、これからの人生で前向きに生きていくためのスキルを身に付けることも…。この記事では「クラス会議」の目的や、ポイント、具体的な進め方をわかりやすく解説します!
クラス会議とは?
クラス会議は、子どもたちが生活上の問題を議題として出し、クラス全員で解決策を探す時間のこと。
いわゆる、学級会の話し合いの時間だと思ってよいのですが、そこにアドラー心理学で大事にされるポイントが取り入れられています。
クラス会議&アドラー心理学で大事にされるポイント
✔︎ポジティヴな空気
✔︎対等性
✔︎自己決定性
✔︎行動の振り返り
✔︎コミュニケーションスキルの上達
✔︎賞罰や競争ではなく、協力や貢献
✔︎多様なものの見方の尊重(マイノリティの意見の尊重)
✔︎子どもの力を信じること
など…
クラス会議については、書籍が出版されており、細かい手順や進め方についても書かれています。
また、クラス会議の型もある程度ありますが、先に示したポイントを押さえていれば、細かい手法はさほど大きな問題ではないというのが、いろいろ勉強した上での私の見解です。
年齢やクラスの実態に応じて、方法は柔軟に変更すべきです。
この記事は、クラス会議では一番有名な上越教育大学の赤坂真二先生の方法を参考に書いていますが、細かい手法を書くときりがありません。
手法よりも、心構えやポリシーにポイントを絞って書いていきます。
クラス会議の目的
クラス会議で目指すのは、自分たちの問題を自分たちの力で解決していけるようになることです。
問題がまったく起きないクラスを目指すわけではなく、問題が起きたときに教師に頼らなくても解決していけるクラスを目指すのです。
また、私が赤坂先生のクラス会議のセミナーに参加したときに、
と言い切っておられたことが印象的でした。
アドラー心理学に基づいた学級経営についてくわしく書かれた『クラス会議で子どもが変わる』という名著があります。
この本の中で、著者のネルセンらはクラス会議の目的を「人生であらゆる領域で成功を治めるための必要なスキルと態度を教える」と表現しています。
アドラー心理学は「他者といかに共に生きるか」がテーマとなった心理学ですが、クラス会議は、他者と共に生きるためのスキルや態度を身に付けることが目的なのです。
クラス会議の進め方
以下は『赤坂版「クラス会議」完全マニュアル』を参考にしながら、その中でも特にエッセンスだと感じるところを抽出して記事にしています。
本の中にはさらに手順やテクニックが書いてありますので、詳しく学ばれたい方は、実際に本を手に取られることをオススメします。
輪になる
クラス会議では、一つの輪になって話し合いをします。輪になると、全員が中心から同じ距離に座ります。
これは、話し合いの場において全員が対等な立場にあると宣言することです。「輪になる」ことに限らず、対等性はクラス会議の重要ポイントの1つです。
対等性
ポジティヴな空気をつくる
輪になったら、次にするのはポジティヴな空気を作ることです。具体的には「コンプリメントの交換」が、クラス会議では推奨されています。
コンプリメント(compliment)とは褒め言葉のこと。
例えば、
・いい気分になったこと
・誰かに感謝したいこと
・誰かを褒めたいこと
など…
ポジティヴなことを伝え合います。
クラス全体で輪になって一人ずつ発表していくのもよいのですが、時間がかかるので数人のグループでやるのもOK。
また、これはあくまでもポジティヴな空気を作ることが目的なので、クラスが成熟していて、最初からポジティヴな空気が作られている場合は、省略することもできます。
議題を決める
次に、クラス会議で話し合う議題を決めます。ここでの重要ポイントは、
自己決定性
です。
とにかく、プロセス一つ一つについて、教師やその他誰かの押しつけではなく、子どもの合意で自己決定していくことを忘れてはなりません。
時間はかかりますが、「自分たちで決めるんだ」ということをどれだけ強調しても、強調しすぎることはないでしょう。
こうすることで、子どもの主体性を育み、責任感を身に付けさせます。
議題はレクリエーションの計画や、クラスの課題など。
また、「どうしたら朝早く起きれるか」など個人的な悩みもOK1。
なお、赤坂先生は、議題提案箱みたいなものを作って全員から議題を集めることを推奨されています。
その日の会議で話し合う議題についてみんなの合意を得られたら、その議題について、全員が共通理解を得られるよう背景などをしっかり確認します。
議題提案者は匿名ではないことが前提なので、提案者本人がその議題について説明することになるでしょう。
また、教師が議案提案者となることもOKですが、その場合も教師の立場として上から押し付けるのではなく、子どもと対等な参加者として提案します2。
意見を出す
議題が決まり背景を確認したら、その議題に対してアイデアを出します。
原則、座席順の輪番で発言します。輪番を用いるのは互いの対等性を大切にしたいからです3。
発言は以下のように黒板やホワイトボードに記録していきます。(子どもの中で記録係を決めて記録していくのが理想的)
クラス会議では発言者がわかるよう、トーキングスティックを用います。
トーキングスティックを輪の中で順番に回しながら、輪番で発言していくのです。
トーキングスティックを持っていない人は発言できません4。
輪番だと発言が用意できていない子供にもトーキングスティックが回ってきます。
発言できない時はパスしてもOK。
ただし、パスするときは黙るのではなく、「パスします」と丁寧に言うようにします。
発言が苦手な子供はずっとパスをし続ける可能性もありますが、そのことも発言の訓練になっていると考えます。
会議の参加者としての自覚を持つことが何より大切なのです。
なお、アイデアを出す段階では、ブレインストーミングの方法を用いて、できるだけ多様な意見が出されるようにします。
多様性
意見を絞り込み、意思決定する
アイデアがたくさん出されたら、出てきた意見を吟味し、絞り込みます。
その際の話し合いのポイントはいくつもあるし、議題にもよると思いますが、例えば以下が考えられるでしょう。
意見を絞り込み、意思決定する際のポイント
・似た意見をまとめたり、論点ごとの整理整頓
・メリットデメリットや費用対効果
・賞罰や競争ではなく、協力や貢献の方法を用いているか
・甘やかしや過干渉になっていないか
・多様性やマイノリティに配慮できているか
ex) レクリエーションの企画だとしたら、苦手な子への配慮ができているか
など
意見を吟味し、ある程度絞り込んだら、多数決で最終決定をしていきます。
なお「協力や貢献の方法を用いているか」「甘やかしや過干渉になっていないか」などは、アドラー心理学で大事にしている価値観が根拠になっています。
以下の記事は、クラス会議と密接にかかわる話なので、是非あわせて読まれることをオススメします!
実行する(掲示物による見える化のススメ)
話し合いで決まったことは実行に移します。
特に、クラスのルールなどは、話し合ったことを掲示物などにして見える化し、実行しやすいようにすることがオススメです。
以下は、私が担任をもったクラスで、忘れ物を減らすためのクラスのルールを掲示したもの。
体育祭の大縄跳びや合唱のときなども、クラス会議で話し合い、ルールを決め、それらを子どもたちが掲示物にしていました。
この学年は、中1→中2と持ち上がりました。
クラス会議を継続的に行うことで、2年生の秋ごろには私が口を出さなくても自分たちで考え、行動できるようになりました。
トラブルがゼロだったわけではありませんが、自分たちで話し合い、解決できていました。
達成できているかの振り返りを行う
クラス会議で決めたことは、きちんと達成できているか、改善点がないかなど、必ず振り返りをします。
振り返りについても、クラス会議で行うとよいでしょう。
自分たちで決める→行動する→振り返りをする→自分たちで決める→行動する→振り返りをする…
このPDCAサイクルをぐるぐる回し続けることで、子どもは成長し、やがて自分たちの力だけで物事を進める集団へと変化していくのです。
以上が、クラス会議のおおまかな進め方です。
繰り返しになりますが、細かいテクニックや進め方については、いろいろな本で紹介されていますので、そちらを参考にされてください。
クラス会議を成功させるための、その他重要ポイント
コミュニケーションスキルの上達
クラス会議の目的は「人生であらゆる領域で成功を治めるための必要なスキルと態度」を身に付けることでした。
その重要な要素として、コミニケーションスキルを上達させることが挙げられます。
例えば、何か意見を伝えるときも、相手を傷つけない主張の仕方について考え、身につけさせます。
また、相手の話を受け止めながら聴く、傾聴スキルも大切です。
クラス会議を通して、コミュニケーションスキルを身に付ける
赤坂先生は『赤坂版「クラス会議」完全マニュアル』の中で、本格的なクラス会議に入る前に、コミニケーションスキルについて考えさせる時間を設けるように書かれています。
さらに、コミュニケーションスキルについて話し合ったり考えた内容は、「話し合いのルール」として明文化し、クラス会議に入る前に、毎回確認することを推奨されています。
子どもの力を信じること
クラス会議の中で、教師がどのような関わりをしていくかと言うのは悩みどころとなるでしょう。
そして、原則として、子どもの力を信じ、子どもに任せていくことが大切です。
子どもの力を信じる
例えば、司会進行や書記の仕事も、最終的には子ども自身の力で進めていけるように指導します。
ただし、最初から子どもに100%任せる事は不可能に近いでしょう。
特に、小学生を対象とした場合、まずは教師がお手本を見せることは必要不可欠だと思います。
少しずつ教師の助けがなくても進めていけるようにすれば大丈夫です。
また、子どもに任せることで、教師自身の思惑通りには進まないことがたくさん起きるでしょうし、非効率だと感じることも少なくないでしょう。
しかし、何事も最初からうまくいくわけはありません。
回数を重ねることで少しずつ上達していく様子を、教師は我慢づよく見守る必要があります。
結果だけでなく、プロセスを大切にする
クラス会議では、基本的に子どもたちの力に任せます。すると当然、うまくいかないこともたくさん出てくるでしょう。
その時、子どもたちは、うまくいかないことに落ち込んだり、ときには他の子どもを責めたりします。このとき教師は、結果だけではなく、プロセスそのものに価値があることを積極的に示していくことが大切です。
結果だけでなく、プロセスを大切にする
例えば、合唱コンクールなどでは「金賞を取る!」などの目標を立てるかもしれません。
しかし、金賞を取れるのは学年で1クラスだけ。
そしてそのために、精一杯努力をしたとしても、相手がいる事ですので必ず金賞が取れる保証など、どこにも無いわけです。
もし精一杯努力をしたのに金賞が取れなかったとしたら、それは失敗なのでしょうか?
この時、結果だけに注目してしまうと、思うような結果が伴わなかった時に「これまでの努力は無駄だった」となります。
そして、その度にクラスは行き詰まるでしょう。
けれどもこれは、人生においても同じです。一生懸命努力しても、結果が出せない時なんて人間誰しもあるのです。
そうしたときに、結果だけではなく、プロセスそのものに価値づけていく。このことが次への活力となることを、教師は伝えていくべきではないでしょうか。
参考文献
クラス会議のさらに細かな進め方や、教師の役割など、まさに「クラス会議」の”完全マニュアル”という感じの一冊。
クラス会議だけでなく、学級経営にアドラー心理学を取り入れる方法について書かれた名著。
この記事を参考に、ぜひクラス会議にチャレンジされてみてくださいね!
また、以下記事はクラス会議に密接する話なので、ぜひあわせてお読みください。
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